平成18年10月19日(木):初稿 |
○生活保護制度の補足性の原理とは、生活保護法第4条で 「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。 2 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」 と規定されているものです。 ○この補足性の原理により資産を有している場合、先ずその資産売却で資金を得てこれを生活費に充当することが求められます。しかしその資産が最低生活維持のために活用され且つ処分するより保有している方が生活維持及び自律助長に実効がある場合は、処分しないでの保持が認められます。 ○具体的な問題になる例としては自動車があります。自動車は原則保有は認められませんが、障害者や僻地居住者で自動車の保有が生活維持のため必要な場合は保有が認められることがあります。土地建物についても現に居住の用に供されているもので処分価値より利用価値が高いもの、つまり処分して賃借すると却って高くつく場合は、その保有が認められる場合もあります。 ○能力については現実に稼働能力があり、働く職場があるのに身勝手な理由で働こうとしない者には補足性の要件が欠けるとして生活保護が適用になりません。 ○民法では第877条で 「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。 2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。」 と扶養義務者を規定しており、この扶養義務者が居る場合、先ず扶養義務者から扶養を受け、それでも足りない分について生活保護に受けることになります。 ○この趣旨を実現するため生活保護法第77条(費用の徴収)には 「被保護者に対して民法の規定により扶養の義務を履行しなければならない者があるときは、その義務の範囲内において、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。」 と規定されています。 ○また老人福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、介護保険法等生活保護法以外の法律で扶助を受けることが出来る場合は、先ずこれらの法律の適用を優先し、生活保護制度はあくまで最終の救済制度と位置づけられています。 以上:962文字
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