サイト内全検索
 

[全 8371頁] 本日 昨日累計
ご訪問有り難うございます。当HPは、私の備忘録を兼ねたブログ形式で「桐と自己満足」をキーワードに各種データを上記14の大分類>中分類>テーマ>の三層構造に分類整理して私の人生データベースを構築していくものです。
なお、出典を明示頂ければ、全データの転載もご自由で、転載の連絡も無用です。しかし、データ内容は独断と偏見に満ちており、正確性は担保致しません。データは、決して鵜呑みにすることなく、あくまで参考として利用されるよう、予め、お断り申し上げます。
また、恐縮ですが、データに関するご照会は、全て投稿フォームでお願い致します。電話・FAXによるご照会には、原則として、ご回答致しかねますのでご了承お願い申し上げます。
     

R 7- 4- 2(水):2025年04月01日発行第386号”弁護士の放浪記 ”
ホーム > 事務所 > 大山滋郎弁護士ニュースレター3 > 「2025年04月01…」←リンクはこちらでお願いします
○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和7年4月1日発行第386号「弁護士の放浪記」をお届けします。

○森光子氏主演舞台放浪記はTV放送されたものを何回か観た記憶はありますが、今回の大山ニュースレターに記載された他の「放浪記」で知っているのは、題名だけは知っている阿佐田哲也の「麻雀放浪記」くらいです。その他の放浪記は全く知らず、その凄まじい内容に驚きました。大山先生の多方面に渡る正に「博識」ぶりにも驚きました。森光子氏は、あの田中角栄氏を、思いやりの深さで大泣きさせたインタビュー記事が記憶に残っています。

○原口侑子弁護士の「ぶらり世界裁判放浪記」も初めて知りました。ネット検索すると弁護士登録17年目のまだ若い方ですが、結構有名な弁護士のようです。「ぶらり世界裁判放浪記」、サンプルを読んでみたら面白そうなのでAmazonに注文してしまいました。積ん読にならなければ良いのですが。大山先生の「中華街放浪記」も期待しています。

*******************************************
横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士の放浪記

林芙美子の放浪記といえば、男に捨てられた主人公が女工や女給などの職を転々としながら放浪する話です。それにしても、森光子主演で二千回も公演をしたのは凄い。私のニュースレターは、四百回に達しないのにもう息切れしています。放浪記で一番好きなのは、なんといっても阿佐田哲也の「麻雀放浪記」です。終戦後のドヤ街を舞台として、主人公「坊や哲」をはじめ、「ドサ健」「出目徳」「女衒の達」「上州虎」みたいな、名前からしてタダモノでない人たちが、賭けマージャンをする、バカバカしいけど、本当に面白い小説です。

私は、本当に弱くていつもカモにされてたけど、麻雀は一度始めると、止められなくなるんですね。メチャクチャ勝っている奴が更に勝つと、ついつい「それ以上点棒を稼いでどうするんだ」とか「点棒をどんなに集めても、人間幸せにはならないんだ」みたいな文句を言いたくなりました。あ、アホカ。。。 別に幸せになるために麻雀で勝ち続けているのではなく、勝負である以上勝たないわけにはいかないんでしょう。麻雀では情け容赦ない人でも、勝負が終わると気前よく食事をご馳走してくれたりします。欧米諸国は、大富豪に気前よく寄付して貰うような仕組みができていると聞いたことがあります。

日本の場合は、お金持ちに対して、「そんなにお金をためてどうするか」とか、「お金があっても人は幸せになれない」みたいな悪口を言ったり、妬んだりする傾向が強いかもしれない。ただ、こういうことって古今東西よくあることなんでしょう。若き日のジョージ・オーウェル(「動物農場」の錯書ですね)が1800年代の終わりに無一文で放浪生活をします。それを記録した「パリ・ロンドン放浪記」は、とても面白い本ですが、その中にも、慈善を受ける浮浪者達は慈善を施す金持を憎んでいたなんて指摘がありました。現代日本でも、生活保護を受けている人は必ずしも感謝しないで、金額が少ないと文句を言う人もいるそうです。

「パリ・ロンドン放浪記」では、オーウェルがパリの高級レストランで給仕の仕事をする話が面白い。日本でもつい先日、牛丼チェーン店でネズミやゴキブリが料理に入っていたことが大問題になっていました。しかし、オーウェルの描く高級レストランはそんなもんじゃない。本当に不潔で、走り回っているネズミが鍋に飛び込むのは日常茶飯事です。料理を皿に盛るときには、指で嘗め回して体裁を整えるなんて話が出てます。こういうのを読むと、他人の作った料理を食べるのが怖くなる一方、現代日本の飲食店は相当レベルが高いと感じちゃいます。そんな全国の飲食店をめぐるテレビ番組が、吉田類の「酒場放浪記」です。「酒場という聖地へ 酒を求め、肴を求めさまよう…」なんて始めのナレーションを暗記したほど、ファンなんです。吉田さんは、様々な酒場に飛び込んでは常連さんに溶け込んで、楽しそうにお酒を飲みます。私もこういう風にしたいんですが、なかなか仲良くなれずに「孤独のグルメ」になってしまうのです。

弁護士でも放浪記があります。原口侑子さんという女性が「ぶらり世界裁判放浪記」という本を書いています。大法律事務所を飛び出して、世界131か国をバックパックで回りながら31の国で裁判を傍聴する話です。アフリカの、マラウイ共和国とかブルンジ共和国なんてところの裁判についても報告してくれます。恥ずかしながら私なんか、そんな国があることすら知りませんでした。ケニアのマサイ族では、法律とは無関係に、人を殺したら牛49頭、過失致死なら29頭で償うんだそうです。「裁判で白黒をつけても後に残るのは恨みだけ」だなんて話、大変面白く勉強になります。見習いたいと思うんですが、あまりに凄すぎて圧倒されます。私の場合は、身の丈に合ったところで、せめて近所を歩いて「中華街放浪記」を作りたいと思ったのでした。

*******************************************

◇ 弁護士より一言

私は歩くのが趣味で、五街道を制覇して、次は北海道と九州目指して歩いてます。しかし最近、私が出かけると、家族がとても心配してくれます。有難いと思う一方、「徘徊老人じゃないのに」と不満にも思うのです。「裸の大将放浪記の山下清画伯だって大丈夫だったんだから」と伝えても、あまり安心してくれないのでした。

以上:2,302文字
ホーム > 事務所 > 大山滋郎弁護士ニュースレター3 > 「2025年04月01…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 4- 1(火):飲酒運転事故市職員退職金不支給処分を違法でないとした最高裁判決
ホーム > 法律その他 > なんでも参考判例 > 「飲酒運転事故市職員退…」←リンクはこちらでお願いします
○大津市の職員であった被上告人(第一審原告、控訴審被控訴人)が、在職中、自動車の飲酒運転をし、物損事故を起こしたことを理由として懲戒免職処分及び退職手当の不支給を内容とする退職手当支給制限処分を受けました。

○これに対し、市職員は、大津市の本件各処分は、裁量権を逸脱ないし濫用してされた違法なものであるとして、本件各処分の取消しを求め、第一審が、本件不支給処分は、本件退職手当条例の考慮要素の適切な考慮がされないままされたものとして、大津市の判断には、裁量権の逸脱ないし濫用があったと認めるのが相当であるとして、大津市長の市職員に対する退職手当支給制限処分を取り消し、大津市は控訴しましたが、大阪高裁は控訴を棄却しました。

○大津市が上告し、令和6年6月27日最高裁判決(判タ1529号○頁)は、本件非違行為は、職務上行われたものではないとしても、上告人の公務の遂行に相応の支障を及ぼすとともに、上告人の公務に対する住民の信頼を大きく損なうものであることが明らかであるとし、本件各事故につき被害弁償が行われていることや、被上告人が27年余りにわたり懲戒処分歴なく勤続し、上告人の施策に貢献してきたこと等をしんしゃくしても、本件全部支給制限処分に係る市長の判断が、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできないから、本件全部支給制限処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断には、退職手当支給制限処分に係る退職手当管理機関の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであるとして、原判決中、上告人敗訴部分を破棄し、同部分につき第1審判決を取り消すとともに、当該部分に関する市職員の請求を棄却しました。

○飲酒運転に対する厳しい風潮が考慮されており、飲酒運転は厳に慎むべきことを肝に銘ずることを覚悟させる判決です。

********************************************

主   文
1 原判決中、上告人敗訴部分を破棄し、同部分につき第1審判決を取り消す。
2 前項の部分に関する被上告人の請求を棄却する。
3 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

理   由
 上告代理人○○○○ほかの上告受理申立て理由について
1 本件は、普通地方公共団体である上告人の職員であった被上告人が、飲酒運転等を理由とする懲戒免職処分(以下「本件懲戒免職処分」という。)を受けたことに伴い、退職手当管理機関である大津市長(以下「市長」という。)から、大津市職員退職手当支給条例(昭和37年大津市条例第7号。令和元年大津市条例第25号による改正前のもの)11条1項1号の規定(以下「本件規定」という。)により一般の退職手当の全部を支給しないこととする処分(以下「本件全部支給制限処分」という。)を受けたため、上告人を相手に、上記各処分の取消しを求める事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。

     (中略)

4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
(1)本件規定は、懲戒免職処分を受けた退職者の一般の退職手当について、退職手当支給制限処分をするか否か、これをするとした場合にどの程度支給しないこととするかの判断を退職手当管理機関の裁量に委ねているものと解され、その判断は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に、違法となるものというべきである(最高裁令和4年(行ヒ)第274号同5年6月27日第三小法廷判決・民集77巻5号1049頁参照)。

(2)前記事実関係等によれば、被上告人は、長時間にわたり相当量の飲酒をした直後、帰宅するために本件自動車を運転したものであって、2回の事故を起こしていることからも、上記の運転は、重大な危険を伴うものであったということができる。そして、被上告人は、本件自動車の運転を開始した直後に本件駐車場内で第1事故を起こしたにもかかわらず、何らの措置を講ずることもなく運転を続け、さらに、第2事故を起こしながら、そのまま本件自動車を運転して帰宅したというのであるから、本件非違行為の態様は悪質であって、物的損害が生ずるにとどまったことを考慮しても、非違の程度は重いといわざるを得ない。

 また、被上告人は、本件非違行為の翌朝、臨場した警察官に対し、当初、第1事故の発生日時について虚偽の説明をしていたものであり、このような非違後の言動も、不誠実なものというべきである。
 さらに、被上告人は、本件非違行為の当時、管理職である課長の職にあったものであり、本件非違行為は、職務上行われたものではないとしても、上告人の公務の遂行に相応の支障を及ぼすとともに、上告人の公務に対する住民の信頼を大きく損なうものであることが明らかである。

 これらの事情に照らせば、本件各事故につき被害弁償が行われていることや、被上告人が27年余りにわたり懲戒処分歴なく勤続し、上告人の施策に貢献してきたこと等をしんしゃくしても、本件全部支給制限処分に係る市長の判断が、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできない。

(3)以上によれば、本件全部支給制限処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断には、退職手当支給制限処分に係る退職手当管理機関の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきである。

5 以上のとおり、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして、以上説示したところによれば、上記部分に関する被上告人の請求は理由がないから、同部分につき第1審判決を取消し、同請求を棄却すべきである。
 よって、裁判官岡正晶の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
以上:2,492文字
ホーム > 法律その他 > なんでも参考判例 > 「飲酒運転事故市職員退…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-31(月):映画”ロード・オブ・ザ・リングSEE三部作”を全て観て-凄い映画!
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”ロード・オブ・…」←リンクはこちらでお願いします

恐れ入りますが、本ページは、会員限定です。

以上:21文字
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”ロード・オブ・…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-30(日):映画”ビッグ・フィッシュ”を観て-不思議な感動に満たされます
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”ビッグ・フィッ…」←リンクはこちらでお願いします
○令和7年3月29日(土)は、久しぶりのツルカメフラメンコアンサンブルの練習日でした。「パコ・デ・ルシア氏演奏”Tico Tico”楽譜付動画紹介」で紹介したパコ・デ・ルシア氏演奏「ティコ・ティコ」をファーストギターは30数年前に舞台で演奏をしたことがある辻英明氏に演奏して頂き、私はセカンドギターを担当します。ティコ・ティコは、鳥の名前で、有名なラテンナンバー曲とのことですが、私は、パコ・デ・ルシア氏の演奏しか知らず、メロディーもなじんでいないからです。天性のリズム感の悪い私は、セカンドギターでリズム感の訓練をします。

○練習後、夕食を取りながら、最近購入した4KUHDソフトで2003(平成5)年製作の映画「ビッグ・フィッシュ」を鑑賞しました。安く手に入ったのと父と子の情愛をテーマにした暖かいファンタジー映画と紹介されていたからです。映画コムでは「ティム・バートン監督が、自らの人生をおとぎ話のように語る男とその息子の絆をつづったファンタジードラマ。エドワード・ブルームは自分の人生をファンタジックな物語のように語り、周囲の人々を楽しませてきた。しかし1人息子のウィルは成長と共に父のホラ話を嫌うようになり、父子は疎遠になってしまう。ある日、父に死期が迫っていると連絡を受けたウィルは、妊娠中の妻を連れて久々に実家へ戻るが……。」と説明されています。

○年老いて死期間近い義父をその息子で夫のウィルと共に見舞いに戻った息子の美しい妊娠中の妻がどこかで観た顔だと思っていたら、「映画”マリアンヌ”を観て-美男・美女の典型に心打たれる」で紹介したマリオン・コティヤール氏でした。父のほら話に愛想を尽かし疎ましいと思っていた息子と違って、息子の嫁は義父に好意を寄せ、父を見直すよう勧め態度に好感を感じました。

○昔、LDソフトで繰り返し鑑賞した映画「ロマンシングストーン秘宝の谷」や映画「ツインズ」で懐かしいダニー・デビート氏が重要な役どころで出てきたのは嬉しいモノで、その他どこかで観たような役者が結構出てきました。若き日の父の経験したファンタジーストーリーは、少々かったるく感じるところもありましたが、楽しく鑑賞できました。映画ラストの死にゆく父に対し、息子が語るファンタジ-ストーリーには不思議な感動に満たされ、繰り返し鑑賞したいと思わせる映画で終わりました。ビッグ・フィッシュとはビッグ・マウスも兼ねた意味だったようです。

【コロンビア・ピクチャーズ100周年!】映画『ビッグ・フィッシュ』2003年公開 父と息子の絆を描く。ティム・バートンが贈る心あたたまるファンタジー!


ビッグ・フィッシュ 予告編

以上:1,098文字
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”ビッグ・フィッ…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-29(土):内縁関係破綻慰謝料として100万円を認めた地裁判決紹介
ホーム > 男女問題 > 男女付合・婚約・内縁 > 「内縁関係破綻慰謝料と…」←リンクはこちらでお願いします
○原告女性が、原告と被告男性との間に内縁関係が成立していたところ、被告の原告に対する暴力やモラルハラスメント行為により内縁関係が破綻したと主張して、慰謝料500万円の支払を請求をしました。

○これに対し、被告男性は、本件同居生活は、単に恋愛関係にある男女が同じ場所で生活した同棲生活で内縁関係はなく、生活費を折半にするなど原告と被告は経済的にも独立した関係で、被告の家族に原告を紹介したことはなく、同居期間も約1年だが、親子3人での実質同居期間は2,3週間程度で、原告と被告との本件同居生活は法的に保護を受け得る関係にはなかったとして争いました。

○これに対し、内縁関係の成立を認めるも、原告と被告の内縁関係が破綻した原因は原告と被告の双方にあるとして、被告に対し慰謝料100万円の支払を命じた令和5年12月7日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

○内縁とは、婚姻意思をもって夫婦の共同生活を送っているが、法の定める婚姻の届出を欠くために法律上は婚姻と認められない事実上の夫婦関係をいうとされていますが、子供をもうけて1年同居を継続すれば、その成立を認めるのは当然と思います。

********************************************

主   文
1 被告は、原告に対し、100万円及びこれに対する令和4年12月24日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを5分し、その4を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は,原告に対し,500万円及びこれに対する令和4年12月24日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要等
1 事案の概要

 本件は,原告が、原告と被告との内縁関係は、被告の原告に対する暴力やモラルハラスメント行為により破綻したと主張して、不法行為に基づき、慰謝料500万円及びこれに対する令和4年12月24日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 前提事実(争いのない事実及び証拠(枝番号があるものは枝番号を含む。以下同じ。)によって容易に認められる事実)
(1)当事者
ア 原告は昭和53年○月○○日生まれの女性であり、被告は平成53年○月○○日生まれの男性である。両者の間には令和2年○○月○○日生まれの子(以下「長男」という。)がある。(甲1)

イ 原告と被告は、雑誌の編集者とライターとして知り合い、平成26年頃から交際を開始し、平成28年の原告の妊娠とその後の中絶等を巡って関係が悪化し、その頃、原告と被告の交際関係は終了した。
 その後、原告と被告は、平成30年ないし令和元年頃から交際を再開した。

(2)原告と被告との同居生活
ア 原告と被告は、令和2年2月14日から、東京都世田谷区αの集合住宅(以下「a」という。)で同居生活(以下「本件同居生活」という。)を開始した。本件同居生活当時、原告は雑誌の編集者、被告はインテリアスタイリストとして稼働していた。
イ 原告は、令和3年5月上旬頃、長男を連れてaを出て、被告との本件同居生活を解消した。

3 争点及び争点についての当事者らの主張
(1)権利又は法律上保護される利益の有無(争点〔1〕)
(原告の主張)
 原告は、令和元年秋頃、被告から、一緒に住もう、子どもが生まれたら一緒に育てていこうなどと言われ、令和2年2月14日頃から、本件同居生活を開始し、内縁の夫婦となった。被告は、自らを未届けの夫(甲5号証の「見届け」は「未届け」の誤記である。)と述べ、「家族で散歩してくれますか」「事実婚も解消、離縁です」とのメッセージを送るなどしており、被告が内縁の夫婦として同居生活をしているとの認識を抱いていたことは明らかである。また、被告が原告の両親に挨拶を行い、被告の母や親族にも原告との結婚を報告しており、原告と被告との本件同居生活は法的に保護を受け得る内縁関係にあった。

(被告の主張)
 被告は、原告に対して一緒に住もうと提案して、本件同居生活を開始したが、この段階では将来結婚するか、子どもをどうするかなどの話は現実味のある話として全くされておらず、本件同居生活は、単に恋愛関係にある男女が同じ場所で生活するという、いわゆる同棲生活を始めただけであり、令和2年2月14日頃に内縁関係が成立したとはいえない。その後も内縁関係を成立させる合意は成立してないし、生活費を折半にするなど原告と被告は経済的にも独立した関係にあった。さらに、被告の家族に原告を紹介したことはなく、同居期間も約1年であり、出産後に原告が入退院を繰り返したり、実家に帰ったりしていた時期もあったことから、長男が誕生し3人で生活した期間に限れば、二、三週間程度であった。したがって、原告と被告との本件同居生活は法的に保護を受け得る関係にはなかった。

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 認定事実


     (中略)

2 争点〔1〕(権利又は法律上保護される利益の有無)について
(1)一般に、内縁とは、婚姻意思をもって夫婦の共同生活を送っているが、法の定める婚姻の届出を欠くために法律上は婚姻と認められない事実上の夫婦関係をいう。これを本件についてみると、原告と被告は、令和元年頃には性交渉を伴う交際関係にあり、令和2年2月14日から本件同居生活を開始している(認定事実(2)ア、イ)。

本件同居生活が開始された当時、原告と被告はいずれも41歳の男女であり(前提事実(1)ア)、本件同居生活開始直後(5日後)に長男の妊娠が判明したことから、被告は原告と一緒に原告の両親を訪ねて挨拶をし、近隣に住む原告の親族にも挨拶をした(認定事実(2)ウ)。

また、被告は、同月27日、原告との続柄について「夫(未届)」と記載したに転入届出を提出し(認定事実(2)イ)、その後も、自らが「未届けの夫」である旨のメッセージや「家族で散歩してくれますか」「事実婚も解消、離縁です」とのメッセージを送る(甲5)などしているのであって、これらの事実に照らせば、原告と被告は婚姻意思をもって夫婦の共同生活を送っていたものと認めるのが相当である。


 これに対し、被告は、生活費を折半するなど原告と被告は経済的にも独立した関係にあったなどと主張するが、生活費の分担の在り方は夫婦によってさまざまであるから、そのような事情により、内縁関係の存在が否定されるものではない。また、本件同居生活が短期間であることについても、当初から短期間の同居が予定されていたなどといった事情はうかがえず、上記判断は左右されない。

(2)以上によれば、原告と被告との間には内縁関係が成立していたと認められる。

3 争点〔2〕(被告の暴力及びモラルハラスメント行為の有無)について


     (中略)

4 争点〔3〕(損害)について
(1)上記3(1)記載のとおり、被告の原告に対する違法行為(暴力やモラルハラスメント行為)が認められ、原告は全治約2週間の頭部挫傷の傷害を負ったり、パニック障害を再発したりしている。また、原告は、被告の違法なモラルハラスメント行為により侮辱され、人格や価値観、行為を不当に否定されるなどしているのであって、被告の違法行為により原告が大きな精神的苦痛を被ったことは明らかである。

 他方で、原告と被告は本件同居生活開始直後から口論が絶えず、原告も被告を責めるようなメールを多数送ったり、被告に対して執拗に文句を言ってその場から開放しないこともあり、被告の暴力や暴言が原告の言動に起因している部分があることも否定できない。

また、本来であれば、原告と被告は、話合いを通じて育児や家事などに対する考え方や価値観をすり合わせ、口論の原因を取り除いて関係の改善を図るべきところ、育児や仕事が多忙なこともあり、十分な話合いができず、関係を改善できないまま別居するに至っている。

そうすると、原告と被告の内縁関係が破綻した原因は原告と被告の双方にあるというべきであり、その原因が被告の違法行為(暴力やモラルハラスメント行為)のみにあるとの原告の主張は理由がない。

(2)その他、本件にあらわれた諸事情を総合すると、被告の違法行為による原告の精神的苦痛を慰謝する慰謝料は100万円をもって相当と認める。


5 以上のとおりであるから、原告の請求は、被告に対し、慰謝料100万円の支払を求める限度で理由がある。

第4 結論
 よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第23部 裁判官 新城博士
以上:3,543文字
ホーム > 男女問題 > 男女付合・婚約・内縁 > 「内縁関係破綻慰謝料と…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-28(金):”放送100年×元気100倍 それいけ!朝ドラ名場面スペシャル”おしんに感激
ホーム > 趣味 > 歴史等 > 「”放送100年×元気…」←リンクはこちらでお願いします
○令和7年3月27日(木)は、午後7時30分から「放送100年×元気100倍 それいけ!朝ドラ名場面スペシャル - NHK」を鑑賞しました。NHK朝ドラは、第1作「娘と私」から始まりますが、「娘と私」は、かすかに記憶があります。昭和36年我が家に初めてテレビを入れた頃に放映されていたからです。初期の頃の朝ドラで記憶に残っているのは1966(昭和41)年放映第6作「おはなはん」です。樫山文枝氏が主演ですが、夫役髙橋幸治氏が、前年大河ドラマ太閤記での信長役でスッカリファンになっていたからです。

○その後の朝ドラも、半分くらいは継続して観ていましたが、何と言っても記憶に残っているのは、1983(昭和58)年放映「おしん」です。昨日の「朝ドラ名場面スペシャル」でも一番長く取り上げられていました。少女時代を演じた小林綾子氏の最上川での両親との別れのシーンは、その後、何度もTVで放映されたこともあり、シッカリ記憶に残っています。父親役伊東四朗氏の「おしん!おしん!」と叫ぶシーンはまぶたに焼き付いています。

○その後、奉公先での虐めに耐えかね家出して途中で倒れているおしんを救った脱走兵役の中村雅俊氏との遣り取りも、昨日の「朝ドラ名場面スペシャル」での放映でシッカリ思い出しました。そこでの豊かな心を持つ大切さを伝える場面での、以下の言葉に感激しました。
おしん お前は これから先何十年も生きていくんだ。
いろんなことがあるだろう。つらいこと 苦しいこと 嫌なやつにだって会う。
だがな 決して 人を恨んだり 憎んだり 傷つけたりしてはいけないぞ。
人を恨んだり 憎んだりすればみんな 自分に返ってくるんだ。

もし おしんが誰かを 憎んだり 恨みたくなった時は 
恨んだり憎んだりする前に相手の気持ちになってみるんだ。
どうして この人は自分に つらく当たるんだろう。
何か理由があるはずだ。
それに思い当たったら自分の悪いところは直す。

でも おしんに悪いところもないのに 相手が横車を押すようなことがあったら 
相手を責めずに 哀れんでやれ。
おしんには人を許せる人間になってほしいんだ。


人を愛することができたら きっと 人にも愛される人間になれる。
そうすれば心豊かに生きていけるはずなんだ。
それだけは覚えておくんだな。
○原作者で脚本も書いた橋田壽賀子氏に脱帽です。法律事務所には、特に離婚事件では、殆どの場合、「人を恨んだり 憎んだり」する最中の人が来ます。しかし、この「悪いところもないのに 相手が横車を押すようなことがあったら 相手を責めずに 哀れんでやる」、「心豊かに生きていける」心構えを持って貰うのは、至難の業です。最近のNHK朝ドラでは、「カムカム・エヴリボデイ安子編」に感激し、最高の朝ドラと思っていましたが、やはり「おしん」にはかないません。
以上:1,165文字
ホーム > 趣味 > 歴史等 > 「”放送100年×元気…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-27(木):未成年者一時保護を理由に養育費支払判決を一部取り消した高裁決定紹介
ホーム > 男女問題 > 養育費・認知 > 「未成年者一時保護を理…」←リンクはこちらでお願いします
○「未成年者一時保護を理由に養育費支払判決を一部取り消した家裁審判紹介」の続きで、その抗告審の令和4年12月15日東京高裁決定(判時2614号31頁、判タ1526号115頁)を紹介します。

○原審審判は、養育費支払を命じた判決の取り消し開始日を未成年者の一時保護が開始した日の翌日としましたが、東京高裁決定は取消しの始期については,具体的な養育費分担義務は審判によって形成されるものであることに加え,未成年者は,令和3年9月15日時点では児童相談所に一時保護されたにとどまることなどの本件における事情の下では,相手方が横浜家庭裁判所に対して本件養育費減額審判を申し立てた令和4年5月17日からとするのが相当としました。

○抗告人(元妻)は、一時保護にすぎず、一時保護中も費用を負担していることを理由に養育料支払の取り消しを不当と主張しましたが、1年以上保護が続いていること、未成年者親権者が抗告人から相手方に変更する審判が出たこと等を理由に取り消しが相当としました。親権者変更審判が決定的理由と思われます。抗告人元妻は親権者でなくなりましたので、養育監護権者でもなくなったからです。

*********************************************

主   文
1 原審判を,以下のとおり変更する。
2 当事者間の東京高等裁判所平成*年(ネ)第*号離婚等請求控訴事件,同第*号離婚等反訴請求事件について,平成22年12月22日にされた判決主文第4項を,令和4年5月17日以降分につき,取り消す。
3 手続費用は,第1,2審を通じて,各自の負担とする。

理   由
第1 本件抗告の趣旨及び理由

 本件抗告の趣旨及び理由は,別紙即時抗告状及び同即時抗告理由書に記載のとおりであり,これに対する相手方の意見は,別紙主張書面1に記載のとおりである。

第2 事案の概要
1 本件は,平成19年に婚姻し,平成20年*月*日に未成年者をもうけたものの,平成23年8月3日に裁判離婚した夫婦の元夫である相手方が,元妻である抗告人に対し,東京高等裁判所が平成22年12月22日に言い渡した判決(同裁判所平成*年(ネ)第*号,同第*号。以下「前件判決」という。)のうち,相手方に対して未成年者の養育費として,毎月末日限り,前件判決確定の日の翌日から平成40年*月*日まで1か月16万円の割合による金員を抗告人に支払うよう命じた主文第4項について,取消しを求めた事案である。

2 原審は,未成年者は,令和3年9月15日以降,D児童相談所により一時保護されており,同月16日以降,抗告人の監護養育下にないので,前件判決主文第4項の同日以降の養育費の定めを取り消す旨の審判(原審判)をしたところ,抗告人が,これを不服として即時抗告した。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,前件判決主文第4項を,令和4年5月17日以降分について取り消すのが相当であると判断する。その理由は,以下のとおりである。

2 認定事実
 一件記録によれば,以下の事実が認められる。
(1)抗告人と相手方は,平成19年5月1日に婚姻し,平成20年*月*日,未成年者をもうけた。

(2)相手方は,東京家庭裁判所に対し,抗告人を被告として離婚等請求訴訟を提起し,同裁判所は,平成22年6月25日,相手方と抗告人とを離婚する,未成年者の親権者を抗告人と定める旨の判決をした。
 これに対し,抗告人は,同判決を不服として控訴するとともに,控訴審において,相手方との離婚を請求し,併せて離婚に伴う附帯処分として,未成年者の養育費の支払及び財産分与を求める旨の反訴を提起した。東京高等裁判所は,平成22年12月22日,〔1〕抗告人の控訴を棄却する,〔2〕抗告人の反訴請求に基づき,抗告人と相手方とを離婚する,〔3〕未成年者の親権者を抗告人と定める,〔4〕相手方は,抗告人に対し,毎月末日限り,判決確定の日の翌日から平成40年*月*日まで1か月金16万円の割合による金員を支払え(主文第4項)との判決(前件判決)をした。

 これに対し,抗告人は上告及び上告受理の申立てをしたが,最高裁判所は,平成23年8月3日,反訴に係る離婚請求部分につき,上告を却下する,その余の上告を棄却する,本件を上告審として受理しない旨の決定をした。

(3)抗告人は,未成年者を小学校及び中学校に通わせず,家の中には腰付近まで生活ごみが積み重なって散乱するなど,未成年者を適切に監護養育してこなかった。このため,未成年者は,令和3年9月15日,D児童相談所に一時保護され,令和4年1月13日から,Eセンターに一時保護委託され,同年3月11日から,〈省略〉ようになった。

(4)相手方は,令和3年11月18日,横浜家庭裁判所に対し,抗告人を相手方として,親権者変更調停を申し立てたが,同調停は不成立となり,審判手続に移行した。そして,同裁判所は,令和4年9月2日,未成年者の親権者を抗告人から相手方に変更する旨の審判をした。これに対し,抗告人は,上記審判を不服として即時抗告をし,現在,東京高等裁判所に係属中である。

(5)相手方は,令和4年5月17日,横浜家庭裁判所に対し,抗告人を相手方として,本件養育費減額審判を申し立てた。

3 検討
(1)家庭裁判所は,養育費に関する判決が確定した場合であっても,その判決の基礎とされた事情に変更が生じ,従前の判決の内容が実情に適合せず相当性を欠くに至った場合には,事情の変更があったものとして,その変更又は取消しをすることができる(民法880条)。

(2)前記認定事実によれば,抗告人は,令和3年9月15日に未成年者が児童相談所に一時保護されて以来,現在に至るまで,未成年者を現実に監護養育していないこと,横浜家庭裁判所は,令和4年9月2日,未成年者の親権者を抗告人から相手方に変更する旨の審判をしたことが認められる。

 以上によれば,相手方に対して未成年者の養育費として月額16万円を抗告人に支払うよう命じた前件判決主文第4項は,実情に適合せず相当性を欠くに至ったと認められるので,これを取り消すのが相当であり,取消しの始期については,具体的な養育費分担義務は審判によって形成されるものであることに加え,未成年者は,令和3年9月15日時点では児童相談所に一時保護されたにとどまることなどの本件における事情の下では,相手方が横浜家庭裁判所に対して本件養育費減額審判を申し立てた令和4年5月17日からとするのが相当である。

(3)これに対し,抗告人は,
〔1〕未成年者はあくまでも「一時保護」されているにすぎず,一時保護が解除されれば再び抗告人が未成年者を監護養育することになること,
〔2〕抗告人は一時保護中の未成年者に面会に行く際,未成年者が欲しがっていたものを用意して持って行くなど,一時保護中であっても一定の費用を要していること
を理由に,前件判決主文第4項を取り消すのは不当である旨主張する。

 しかしながら,上記〔1〕については,抗告人は,令和3年9月15日に未成年者が児童相談所に一時保護されて以来,1年以上にわたって未成年者を監護養育していないことや,横浜家庭裁判所が未成年者の親権者を抗告人から相手方に変更する旨の審判をしたことは,上記(2)で説示したとおりであり,現時点で,未成年者が抗告人の下に戻る見通しは立っていないことをも併せ考慮すると,前件判決主文第4項は,実情に適合せず相当性を欠くに至っており,これを取り消すのが相当であるというべきである。

 また、上記〔2〕についても,抗告人が現在,未成年者を現実に監護養育しておらず,前件判決の基礎とされた事情に変更が生じ,前件判決主文第4項の内容が実情に適合せず相当性を欠くに至ったと認められることは,上記(2)で説示したとおりであり,仮に抗告人が未成年者との面会の際に物品を差入れることがあったとしても,上記判断を左右するものではない。 
 したがって,抗告人の上記主張は,いずれも採用することができない。

4 結論
 以上によれば,本件申立てについては,前件判決主文第4項を令和4年5月17日以降分について取り消すのが相当であるところ,これと一部異なる原審判は,その限度で相当でないのでこれを変更することとして,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 大竹昭彦 裁判官 神野泰一 裁判官 土屋毅)
以上:3,434文字
ホーム > 男女問題 > 養育費・認知 > 「未成年者一時保護を理…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-26(水):未成年者一時保護を理由に養育費支払判決を一部取り消した家裁審判紹介
ホーム > 男女問題 > 養育費・認知 > 「未成年者一時保護を理…」←リンクはこちらでお願いします
○申立人と相手方は、平成19年5月1日に婚姻をしましたが、その後当事者間の離婚等請求控訴事件、離婚等反訴請求事件において、平成22年12月に、申立人と相手方とを離婚する旨の判決が言い渡され、判決は、相手方が未成年者を監護養育する前提で、未成年者の親権者を相手方と定め、申立人に対し判決確定の日の翌日から平成40年*月*日まで1か月16万円の割合による養育費の支払を命じ、同判決は確定しました。

○ところが、未成年者は、令和3年9月15日以降、D児童相談所により一時保護されたことから、申立人は、相手方が未成年者を監護養育しなくなったことを理由に、令和3年9月16日以降の未成年者の養育費の定めを取り消すことを求めました。

○これについて、未成年者は、令和3年9月15日以降、D児童相談所により一時保護されており、家庭裁判所は、扶養関係に関する判決が確定した場合であっても、その判決の基礎とされた事情に変更が生じ、従前の判決の内容が実情に適合せず相当性を欠くに至った場合には、事情の変更があったものとして、その取消し又は変更をすることができ、未成年者は、令和3年9月16日以降、相手方の監護養育下にないから、申立人が相手方に対し養育費を支払う必要はなく、上記の事情の変更が認められるとして、申立人の申立てを認容した令和4年8月26日横浜家裁審判(判タ1526号118頁)全文を紹介します。

○相手方が即時抗告し、抗告審は東京高裁は取り消しの始期について、一部変更していますので、別コンテンツで紹介します。

********************************************

主   文
1 当事者間の東京高等裁判所平成*年(ネ)第*号離婚等請求控訴事件,同第*号離婚等反訴請求事件について平成22年12月22日にされた判決主文第4項の申立人が相手方に対し支払うべき令和3年9月16日以降の未成年者の養育費の定めを取り消す。
2 手続費用は各自の負担とする。 

理由の要旨
第1 申立ての趣旨

 主文1項同旨

第2 当裁判所の判断
1 事実の調査の結果によれば、次の事実を認めることができる。
(1)申立人と相手方は,平成19年5月1日に婚姻をした。当事者間の東京高等裁判所平成*年(ネ)第*号離婚等請求控訴事件,同第*号離婚等反訴請求事件について,同裁判所は,平成22年12月22日,申立人と相手方とを離婚する旨の判決(以下「前件判決」という。)を言い渡した。前件判決は,相手方が未成年者を監護養育する前提で,未成年者の親権者を相手方と定め,申立人に対し判決確定の日の翌日から平成40年*月*日まで1か月16万円の割合による養育費の支払を命じた。同判決は平成23年8月3日確定した。

(2)未成年者は,令和3年9月15日以降,D児童相談所により一時保護されている。

2 家庭裁判所は,扶養関係に関する判決が確定した場合であっても,その判決の基礎とされた事情に変更が生じ,従前の判決の内容が実情に適合せず相当性を欠くに至った場合には,事情の変更があったものとして,その取消し又は変更をすることができる。

3 上記認定事実に照らすと,未成年者は,令和3年9月16日以降,相手方の監護養育下にないから,申立人が相手方に対し養育費を支払う必要はなく,上記の事情の変更が認められる。
裁判官 高谷英司
以上:1,384文字
ホーム > 男女問題 > 養育費・認知 > 「未成年者一時保護を理…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-25(火):マンション敷地崩落死亡事故に管理会社等の責任を認めた地裁判決紹介
ホーム > 法律その他 > マンション法 > 「マンション敷地崩落死…」←リンクはこちらでお願いします
○判例時報2615号令和7年3月11・21日合併号にマンションの敷地の一部が崩落し、直下の市道を通行していた被害者亡Dが崩落に巻き込まれ死亡した事故について、通行人との関係で、マンションの管理会社及び同会社の従業員に本件事故の発生を防止する義務の違反があるとして不法行為責任を認めた令和5年12月15日横浜地裁判決(判時2615号○頁、判タ1524号229頁)が掲載されていましたので、関連部分を紹介します。

○マンション敷地崩落による死亡事故は珍しい事案ですが、被害者遺族とマンション管理組合との間には和解契約が成立し、組合から遺族である原告A(亡Dの義父)に3385万2521円、原告B(亡Dの実母)に6534万6862円、原告C(亡Dの妹)に80万0617円が支払われています。遺族は、組合和解金でも不足する損害として、マンション管理会社とその従業員に対し、原告Aが約2074万円、原告Bが約4003万円、原告Cが約49万円を請求して提訴しました。

○横浜地裁判決は、敷地崩落による死亡事故の発生を予見できたとして、被告管理会社らの過失責任を認めて、亡D自身の全損害を7429万4850円と認定し、その損害について原告らの法定相続分で相続承継した損害分に固有の慰謝料と弁護士費用・遅延損害金を付加した合計額から組合が支払った和解金を控除して、原告Aに約24万円、原告Bに約72万円、原告Cに約10万円を連帯して支払うようにマンション管理組合とその従業員に命じました。

*********************************************

主   文
1 被告らは、原告Aに対し、連帯して24万7008円及びこれに対する令和5年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告らは、原告Bに対し、連帯して72万2182円及びこれに対する令和5年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告らは、原告Cに対し、連帯して10万3025円及びこれに対する令和5年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
5 訴訟費用は、これを50分し、その49を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。
6 この判決は、第1項から第3項までに限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

1 被告らは、原告Aに対し、連帯して2073万7777円及びこれに対する令和5年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告らは、原告Bに対し、連帯して4003万0951円及びこれに対する令和5年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告らは、原告Cに対し、連帯して49万0451円及びこれに対する令和5年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要等
1 本件は、原告らが、原告A及び原告Bの子である亡Dが別紙物件目録記載の建物(以下「本件マンション」という。)の敷地の一部である東北東向きの斜面地部分(以下「本件斜面地」という。)の一部の土砂の崩落に巻き込まれ死亡した事故(以下「本件事故」という。)について、以下のとおり請求するものである。

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 認定事実
(後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば以下の各事実が認められる。)

     (中略)

2 争点1(被告Eの不法行為責任の有無)について
(1)
ア 上記1及び前提事実を前提にすれば、以下の各事実を認定することができるので、被告Eについて、通行人である亡Dとの関係で、条理上、その生命、身体に生じる損害を防止する義務を負っていたということができる。
(ア)被告会社は、本件管理委託契約上、本件マンションの亀裂、瑕疵等の速やかな通知義務又は本件組合のため緊急性の高い業務を行う権限と義務を有していると認められる。
 したがって、被告会社は、本件斜面地の崩落の危険性を発見したときには、本件組合に生じる損害を防止する義務を負っている。
 被告Eは、被告会社の担当者として、上記義務を履行できた可能性の最も高い者である。

(イ)本件斜面地の直下を本件市道が走っていることや、本件斜面地が土砂災害警戒地域に指定されていたことを踏まえると、被告Eが、上記義務を履行しない場合、本件斜面地の崩落によって、亡Dを含む通行人に対してその生命、身体の安全を損なうこととなる重大な結果が発生する。

(ウ)被告Eが、本件市道を管理する逗子市に連絡して、通行禁止の措置を求めたり、自ら又はHをしてコーンを置いて通行人に注意を呼びかけたりする措置をとるなど事故発生を回避する措置をとることは可能であった。

(エ)亀裂に関する一般的な知見の存在及びそれに沿うHの認識を踏まえると、合理的な判断ができる通常人であれば、本件亀裂の存在、専門家に対する相談及び調査の不存在によって、亀裂発見から約22時間後の崩落の危険性が否定できないことを認識することができる。被告Eにおいても、本件亀裂の存在、専門家に対する相談及び調査の不存在を認識している以上、何らの根拠もなく何らの対応もしないことが不合理であることは容易に理解可能であるので、予見可能性がなかったとはいえない。

イ 被告Eは、上記義務を負っていながら、結果回避措置をとっていないので条理上の義務を怠ったものとして、過失責任を免れない。

(2)これに反する被告らの主張は以下のとおり採用できない。
ア 被告らは、本件斜面地に関して、本件管理委託契約上、いかなる管理業務も受託していない旨の主張をする。
 しかし、少なくとも上記1で認定した本件亀裂の通知義務又は緊急時における本件組合の損害発生回避義務は本件管理委託契約上認められているものと解されるので、上記主張は採用できない。

イ 被告らは、予見可能性の認識の対象として、本件斜面地の崩落事故が落石防止柵で防止できない程度の大規模であること、発見から約22時間後の短時間で発生すること、通行人の生命を奪う程度の重大な損害が生じることが必要である旨の主張をする。

 しかし、不法行為として過失責任を問うために必要な予見可能性の認識の対象としては、他人に権利侵害が発生する具体的おそれの認識で足りるというべきであり、それ以上の具体的な認識までは不要であると解される。
 本件の場合、一般的に亀裂が崩落の前兆と理解されていること、落石防止柵の存在を認識しているHが、令和2年2月15日まで猶予があるか判断しかねると回答していることを踏まえると、本件斜面地が崩落する具体的おそれは認識可能であると認められる。
 また、本件斜面地の高さが約15.9mメートルであることを踏まえると、本件斜面地の崩落によって他人の生命侵害が発生するおそれも認識可能と認められるので、過失責任を問うについて必要な予見可能性の認識は満たされているということができる。


 被告らの主張は、緊急性の認識可能性がなかったことをいうものであるが、過失責任を問うに必要なおそれの危険性の程度は、緊急であるまでの必要性はなく、行為時において結果発生防止策を命じるに足りる程度の具体性で足りるというべきであり、本件に即していえば、近い将来崩落するおそれの認識可能性で足りるというべきである。

ウ 被告らは、本件斜面地の崩落の具体的おそれの認識可能性はなかった旨の主張をする。主張に沿う証拠(丙4、6、11、12、証人H、被告E)がある。
 しかし、上記証拠のうち、H及び被告Eの供述を内容とするもの(丙11、12、証人H、被告E)は、利害関係人である被告会社の従業員が具体的おそれを認識していなかったことをいうにとどまり、認識可能性がなかったことを合理的に説明したものではない。上記証拠のうち、技術士等の資格を有する専門家の意見書(丙4、6)の内容は、本件亀裂のみによっては、崩落の時期が予見できないことをいうものであって、専門家に対する相談や調査の必要性を否定したものではなく、むしろ、専門家に対する相談や本件斜面地の調査をしていれば、直ちに崩落するおそれの認識可能性があったことをいうものと理解できるので、被告Eの予見可能性を否定するに足りるものではない。

 以上のとおりであり、上記証拠によっても、本件斜面地の崩落の具体的おそれの認識可能性は否定されない。

 また、本件亀裂が崩壊の前兆であり、本件亀裂についての専門家への相談及び本件斜面地の調査がなされていない以上、通常人であれば、直ちに崩落する危険性があることも認識可能というべきである。

3 争点2(被告会社の使用者責任又は不法行為責任の有無)について
(1)上記2のとおり、被告Eの不法行為責任が認められ、かつ、同人の不法行為は被告会社の業務執行の際に行われたものと認められるので被告会社は使用者責任を免れない。

(2)被告Eが不法行為責任を負うか否かにかかわらず,前提事実及び上記1の認定事実を前提にすれば、被告会社は、本件斜面地の直下を通行する通行人との関係においても、本件報告書の内容を確認して被告会社の従業員に対し本件斜面地の危険性を説明し、本件斜面地に亀裂を発見した場合には、速やかに結果回避措置をとるように予め指揮命令すべき条理上の義務があったと解される。 

 しかし、被告会社は上記義務を怠ったのであるから、被告会社自身の不法行為責任も免れない。

(3)これに対し、被告会社は、本件報告書の内容を確認すべき義務はなかった旨の主張をする。
 しかし、グローベルスが本件報告書を被告会社に交付した目的は、その内容を踏まえて適切な本件斜面地の管理を求める趣旨と解され、被告会社において、その趣旨を受領時に理解できなかったとは考え難い。本件管理委託契約が締結された経緯を踏まえると、被告会社において本件報告書の内容を確認すべき義務があったというべきである。

4 争点3(原告らの損害額)について
(1)亡Dの損害について
ア 治療費について

     (中略)

 上記アからオまでの小計は7429万4850円である。

(2)原告Aの損害額
ア 相続分
 原告Aの相続分は3分の1のため、2476万4950円(=7429万4850円×1/3)となる。
イ 固有の慰謝料
 証拠(甲76、原告A)によれば、亡Dを突然失った養父である原告Aの精神的苦痛は極めて大きいことが認められる。その他、被告らの過失の程度や本件記録上の全事情を考慮すれば、原告A固有の慰謝料として165万円を認めるのが相当である。
ウ 弁護士費用
 弁護士費用は、上記ア、イの合計2641万4950円の1割に相当する264万1495円をもって相当額と認める。
エ 小計 2905万6445円
オ 和解金受領日までの確定遅延損害金
 本件事故発生から3年172日が経過していることから、確定遅延損害金は504万3084円(=2905万6445円×0.05×(3+172/365))となる。
カ 和解金の充当
 原告Aは、和解金として3385万2521円を受領した。この和解金は、まず、本件事故日から和解金受領日までの遅延損害金に充当されるため、充当後の損害金元本は、24万7008円(=2905万6445円-(3385万2521円-504万3084円))となる。

(3)原告Bの損害額
ア 相続分
 原告Bの相続分は3分の2のため、4952万9900円(=7429万4850円×2/3)となる。
イ 固有の慰謝料
 証拠(甲76、原告A)によれば、亡Dを突然失った実母である原告Bの精神的苦痛は極めて大きいことが認められる。その他、被告らの過失の程度や本件記録上の全事情を考慮すれば、原告B固有の慰謝料として165万円を認めるのが相当である。
ウ 弁護士費用
 弁護士費用は、上記ア、イの合計5117万9900円の1割に相当する511万7990円をもって相当額と認める。
エ 小計 5629万7890円
オ 和解金受領日までの確定遅延損害金
 本件事故発生から3年172日が経過していることから、確定遅延損害金は977万1154円(=5629万7890円×0.05×(3+172/365))となる。
カ 和解金の充当
 原告Bは、和解金として6534万6862円を受領した。この和解金は、まず、本件事故日から和解金受領日までの遅延損害金に充当されるため、充当後の損害金元本は、72万2182円(=5629万7890円-(6534万6862円-977万1154円))となる。

(4)原告Cの損害額
ア 固有の慰謝料
 証拠(甲76、原告A)によれば、実妹である原告Cは、亡Dから特に面倒を見てもらっていたことなどから、同人を突然失ったことにより極めて大きな精神的苦痛を受けたことが認められる。その他、被告らの過失の程度や本件記録上の全事情を考慮すれば、原告C固有の慰謝料として70万円を認めるのが相当である。
イ 弁護士費用
 弁護士費用は、上記アの1割に相当する7万円をもって相当額と認める。
ウ 小計 77万円
エ 和解金受領日までの確定遅延損害金
 本件事故発生から3年172日が経過していることから、確定遅延損害金は13万3642円(=77万円×0.05×(3+172/365))となる。
オ 和解金の充当
 原告Cは、和解金として80万0617円を受領した。この和解金は、まず、本件事故日から和解金受領日までの遅延損害金に充当されるため、充当後の損害金元本は、10万3025円(=77万円-(80万0617円-13万3642円))となる。

5 結論
 よって、原告らの請求は、それぞれ上記4記載の元本及びこれに対する令和5年7月27日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないのでこれをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。
横浜地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官 小西洋 裁判官 谷藤一弥 裁判官 門野亜美
以上:5,742文字
ホーム > 法律その他 > マンション法 > 「マンション敷地崩落死…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-24(月):映画”教皇選挙”を観て-残念ながら余り感動無し
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”教皇選挙”を観…」←リンクはこちらでお願いします
○令和7年3月23日(日)は、夕方、久しぶりにTOHOシネマズ仙台3番シアターで話題の映画「教皇選挙」を鑑賞しました。映画コムでは、「全世界14億人以上の信徒を誇るキリスト教最大の教派・カトリック教会。その最高指導者で、バチカン市国の元首であるローマ教皇が亡くなった。新教皇を決める教皇選挙「コンクラーベ」に世界中から100人を超える候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の閉ざされた扉の向こうで極秘の投票がスタートする。」と解説されています。

○ローマ教皇の選挙は「コンクラーベ」というそうですが、日本語で「根比べ」と言われるほど長い時間がかかる選挙で、決まると選挙が行われる礼拝堂の煙突から白い煙が出されるとの知識はありました。最近、一時危篤の報道がなされた現在のフランシスコ教皇が、10数年前に選出されるときも長い時間がかかったとの報道があったように記憶しています。

○殆どが会話劇で途中眠くなるのではと思いましたが、鑑賞中は、誰が教皇に選出されるかハラハラの連続で、眠くはなりませんでした。最終的には、亡くなった教皇が死期を悟り、入念に時期教皇選出のシナリオを作った上で、シナリオ通りに選出されたとのレビューもありましたが、そこまでは気付きませんでした。最後は、反トランプ思想で製作されたのかと思わせるシナリオでしたが、それが何かは映画を観ての楽しみです。

○話題の映画だけあって観客席は7割程度埋まっていましたが、映画終了後のクレジット(エンドロール)が長々と続き完全終了して電気が付くまで、席を立つ人が殆ど居ませんでした。皆さん、感動の余韻に浸っていたのかも知れません。しかし、残念ながら、私自身は終わってみると余り映画の感動を感じませんでした。私の感性には合わなかったのかも知れません。

【アカデミー賞《脚色賞》受賞】映画『教皇選挙』予告|3月20日[木・祝]全国公開

以上:783文字
ホーム > 趣味 > 映画3 > 「映画”教皇選挙”を観…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-23(日):政治家の寄付禁止に関する公職選挙法・政治資金規正法条文備忘録2
ホーム > 法律その他 > その他法律その他 > 「政治家の寄付禁止に関…」←リンクはこちらでお願いします
○政治家とお金と言えば何と言っても金権政治家の権化と言われた田中角栄氏です。最も有名なエピソードは、若手議員が女性問題で100万円必要になり、派閥ボスに借りに行くも断られ、田中角栄氏に泣きつくと、角栄氏は現金300万円を手渡し、100万円で問題にケリをつけ、100万円で世話になった人にご馳走し、100万円をこれからのため取っておけ、全額返済無用と伝え、感涙した若手議員はそのまま田中派入りしたとの話しです。この若手議員は誰なのか100数十冊ある角栄本で調べたのですが、実名データは見当たりませんでした。

○ウィキペディア田中角栄解説には「福田派の福家俊一が入院した時、いち早く見舞いに訪れ、分厚い袋に500万もの金を入れて足元に忍ばせた。その後4回ほど田中は見舞いに訪れたが、その度に500万を忍ばせていたという。福家は以後、田中の批判をしなくなった。」とのエピソードが記述されています。

○角栄氏にはこの手の話しは山ほどあり、自民党他派閥だけでなく、対立する野党の政治家にもお金を配っていたとの話しは、角栄本の中に山ほど記載されています。角栄氏が衆議院議員になったのは1947(昭和22)年、1957(昭和32)年郵政大臣、1962(昭和37)年大蔵大臣、1972(昭和47)年内閣総理大臣と出世しましたが、この300万円のエピソードは、昭和30~40年代の話しと思われます。2025(令和7)年からは60年も前の話しで、300万円の価値はその3倍くらいはあった時代かも知れません。

○角栄氏には、数百万円単位のお金、今の時代なら数千万円単位になるかも知れないお金を他の議員や官僚に渡していたとのエピソードが山ほどあり、おそらく実際の話と思われますが、贈与税問題や政治資金規正法問題は、角栄本には全く記述されていません。公にはならない藪の中の話しだからですが、この田中角栄氏のエピソードに比べたら、現在の石破首相の10万円商品券問題なんて問題にする方がおかしいなんて考え方もあるかも知れません。

○以上の角栄氏のエピソードから寄附を規制した政治資金規正法ができたのは昭和50年代以降かと思っていました。しかし、ウィキペディア解説では、「本法は、第二次世界大戦後の混迷した政治情勢のもと現出した政治腐敗と群小政党の乱立に対処するため、GHQの指導により1948(昭和23)年に制定された。当初、内務省が政党法の立案を試みたが成案に至らず、その後国会での各党間での協議を経て、最終的にアメリカ合衆国の腐敗行為防止法をモデルとする政治資金規正法として成立した。制定当初は政治資金の収支の公開に主眼が置かれ、寄附の制限は設けられていなかった。」とされています。

○その後、「しかし、田中金脈問題を契機として、1975(昭和50)年に全面的な改正が行われた(三木内閣時)。この時、はじめて寄附の制限が導入され、同時に政治団体の収支公開も強化された。」と説明されており、前述の角栄氏の金配りは、当時、政治資金規正法「寄附」規制はなく、違法ではなかったようです。
以上:1,265文字
ホーム > 法律その他 > その他法律その他 > 「政治家の寄付禁止に関…」←リンクはこちらでお願いします
R 7- 3-22(土):政治家の寄付禁止に関する公職選挙法・政治資金規正法条文備忘録
ホーム > 法律その他 > その他法律その他 > 「政治家の寄付禁止に関…」←リンクはこちらでお願いします
○石破首相が新人議員に10万円商品券を渡した行為が、政治資金規正法あるいは公職選挙法で禁止されている寄付に該当するかどうかが問題となり、連日、報道されています。刑事事件を扱わない民事弁護士実務で、政治資金規正法あるいは公職選挙法を読む機会はありませんが、法律専門家備忘録として条文を確認します。

○政治家の寄附で問題になるのは選挙区民に対する寄附の禁止で、政治家は選挙区民に対しては、政治家本人が出席する結婚披露宴祝儀・葬式香典以外の寄付は一切禁じられています。たまに問題とされる秘書が出席しての政治家としての寄付は公職選挙方違反行為です。秘書が秘書名義で祝儀・香典を出すのは問題ありませんが、政治家の代理出席として政治家名義で祝儀・香典を出すのは公選法違反行為になります。

○石破首相の10万円商品券問題は、新人議員への贈呈なので、公選法規制寄付には該当しませんが、政治活動に関する贈呈と評価され、渡した石破首相、受け取った新人議員いずれも政治資金規正法違反として1年以下の禁錮こ又は50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。石破首相は政治活動ではなく、お土産で公選法違反ではないと主張していますが、微妙なところです。受け取った新人議員は受け取った時点で違法な受領行為となりますが、直ぐに返していますので、大目に見られるでしょう。

○「寄附」とは、政治資金規正法では「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付で、党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のものをいう。」と、公職選挙法では「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいう。」と定義されています。

*********************************************

公職選挙法
第199条の2(公職の候補者等の寄附の禁止)

 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならないただし、政党その他の政治団体若しくはその支部又は当該公職の候補者等の親族に対してする場合及び当該公職の候補者等が専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会その他の政治教育のための集会(参加者に対して饗きよう応接待(通常用いられる程度の食事の提供を除く。)が行われるようなもの、当該選挙区外において行われるもの及び第199条の5第4項各号の区分による当該選挙ごとに当該各号に定める期間内に行われるものを除く。以下この条において同じ。)に関し必要やむを得ない実費の補償(食事についての実費の補償を除く。以下この条において同じ。)としてする場合は、この限りでない。

第249条の2(公職の候補者等の寄附の制限違反)
 第199条の2第1項の規定に違反して当該選挙に関し寄附をした者は、1年以下の禁錮こ又は30万円以下の罰金に処する。
2 通常一般の社交の程度を超えて第199条の2第1項の規定に違反して寄附をした者は、当該選挙に関して同項の規定に違反したものとみなす。
3 第199条の2第1項の規定に違反して寄附(当該選挙に関しないもので、かつ、通常一般の社交の程度を超えないものに限る。)をした者で、次の各号に掲げる寄附以外の寄附をしたものは、50万円以下の罰金に処する。
一 当該公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)が結婚披露宴に自ら出席しその場においてする当該結婚に関する祝儀の供与
二 当該公職の候補者等が葬式(告別式を含む。以下この号において同じ。)に自ら出席しその場においてする香典(これに類する弔意を表すために供与する金銭を含む。以下この号において同じ。)の供与又は当該公職の候補者等が葬式の日(葬式が二回以上行われる場合にあつては、最初に行われる葬式の日)までの間に自ら弔問しその場においてする香典の供与

*********************************************
政治資金規正法
第21条の2(公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止)

 何人も、公職の候補者の政治活動(選挙運動を除く。)に関して寄附(金銭等によるものに限るものとし、政治団体に対するものを除く。)をしてはならない。
2 前項の規定は、政党がする寄附については、適用しない。

第21条の3(寄附の総額の制限)
 政党及び政治資金団体に対してされる政治活動に関する寄附は、各年中において、次の各号の区分に応じ、当該各号に掲げる額を超えることができない。
一 個人のする寄附
 2000万円

第22条の2(量的制限等に違反する寄附の受領の禁止)
 何人も、第21条第1項、第21条の2第1項、第21条の3第1項及び第2項若しくは第3項又は前条第1項若しくは第2項の規定のいずれかに違反してされる寄附を受けてはならない。

第22条の8(政治資金パーティーの対価の支払に関する制限)
 政治資金パーティーを開催する者は、一の政治資金パーティーにつき、同一の者から、150万円を超えて、当該政治資金パーティーの対価の支払を受けてはならない。

第26条 次の各号の一に該当する者(団体にあつては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)は、1年以下の禁錮こ又は50万円以下の罰金に処する。
一 第21条第1項、第21条の2第1項、第21条の3第1項及び第2項若しくは第3項又は第22条第1項若しくは第2項の規定に違反して寄附をした者
二 第21条第3項の規定に違反して寄附をすることを勧誘し、又は要求した者
三 第22条の2の規定に違反して寄附を受けた者
以上:2,431文字
ホーム > 法律その他 > その他法律その他 > 「政治家の寄付禁止に関…」←リンクはこちらでお願いします