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令和 7年 7月 3日(木):初稿 |
○交通事故で、後遺障害等級11級標準労働能力喪失率20%を認定されましたが、これまでしていた立ち仕事ができなくなり、且つ、60歳を越えた高齢のため実質仕事を失った方の損害賠償請求を依頼され、後遺障害等級標準労働能力よりも高い労働能力喪失を認めた裁判例を探しています。 ○受傷により右膝関節に12級12号標準労働能力喪失率14%の後遺障害を残したタクシー運転手兼非鉄金属業の被害者(男・症状固定時59歳)の、後遺障害による逸失利益について、8年間にわたり25パーセントの労働能力喪失を認めた平成6年9月27日東京地裁判決(交通事故民事裁判例集27巻5号1301頁)関連部分を紹介します。 ********************************************* 主 文 一 被告は、原告に対し、金1094万4016円及びこれに対する平成2年6月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 二 原告のその余の請求を棄却する。 三 訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。 四 この判決は、原告勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第一 原告の請求 一 被告は、原告に対し、金2564万3502円及びこれに対する平成2年6月26日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 二 訴訟費用の被告の負担及び仮執行宣言 第二 事案の概要 一 本件は、市街地における信号により交通整理の行われていない交差点において普通乗用車と軽四輪貨物自動車の衝突があり、普通乗用車の運転者が傷害を受けたことから、軽四輪貨物自動車の運転者を相手にその人損について賠償を求めた事案である。 二 争いのない事実 (中略) 三 本件の争点 (中略) (3)逸失利益 原告は、本件事故のため、右膝関節に12級の後遺障害を残したが、同関節障害のためアクセルを踏み込む動作や重量のある物の運搬に支障を来たし、前記いずれの職種についても、労働能力が50パーセント喪失した。また、原告の症状固定時の年齢は59歳であるから就労可能年数は、67歳までの8年間である。 (中略) 第三 争点に対する判断 一 原告の損害額について (中略) 3 逸失利益 882万0025円 (1)タクシー運転手としての逸失利益 原告は、本件事故のため、右膝関節に12級の後遺障害を残したが、同関節障害のためアクセルを踏み込む動作に支障を来たし、長時間の運転ができず、また、重量のある物の運搬に重大な支障を来たしている。このため、タクシー運転手としての業務遂行は不可能となつたが、甲15、19、原告本人によれば、本件事故がなければ、64歳までは太陽自動車の正勤の乗務員として、65歳からは嘱託の乗務員として正勤の乗務員と同一の給与のベースで、それぞれタクシーの運転手の業務を継続することができたことが認められる。 そして、現在は太陽自動車で車庫の管理の仕事を行い、月給22、3万円の賃金を得るに止まること、原告がタクシー運転手としての業務を継続するとしても、歩合給の率が高い右業務の賃金体系に照らせば、加齢とともに収入が減ることが予想されることを斟酌すると、平成元年度の給与を基礎とすれば本件事故により労働能力が25パーセント喪失したものと認めるのが相当である。 また、原告の症状固定時の年齢は59歳であるところ、右事情に鑑みれば、就労可能年数を67歳までの8年間とし、ライプニツツ方式により中間利息を控除するのが適当であり、右逸失利益は882万0025円となる。 計算 535万4394×0.25×6.589=882万0025 (2)非鉄金属業の逸失利益 前認定のとおり、非鉄金属業では、収益の基礎とすべき平成元年度でも専従者控除をすると34万2721円の赤字となつており、逸失利益の基礎とすべき利益が不明であつて、右労働能力喪失によりどの程度の利益を逸失したかを認定することができないので、非鉄金属業による逸失利益は独立の損害としては認めずに、慰謝料算定に当たつての斟酌事由として考慮することとする。 (中略) 第四 結論 以上の次第であるから、原告の本件請求は、被告に対し、金1094万4016円及びこれに対する本件事故の日である平成2年6月26日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるが、その余の請求は理由がないから棄却すべきである。 裁判官 南敏文 以上:1,859文字
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