平成17年 1月15日(土):初稿 平成17年 1月17日(月):更新 |
知的財産権研究会 レジュメ h16.12.14 石井慎也 1 不正競争防止法2条1項1号の不正競争とは ① 「他人の商品等表示(人の業務に係る氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ)」として, →商品等表示の存在 ② 「需要者の間に広く認識されているものと」 →周知性 ③ 「同一若しくは類似の商品等表示を使用した商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引き渡しのために展示し,輸出し,輸入し,若しくは電気通信回線を通じて提供して」 →同一または類似の商品等表示の使用 ④ 「他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」 →混同行為 2 表示の類似性の判断基準 最高裁第2小法廷昭和58年10月7日判決「マンパワー事件」 「取引の実情のもとにおいて取引者又は需要者が両者の外観・呼称又は観念にもとづく印象,記憶,連想等から両者を全体的に類似したものと受け取るおそれがあるか否かを基準として判断すべき」 3 各要素の典型例 ① 外観→即席麺の包装や図案,バター飴牛乳缶型容器 ② 呼称→「DAIWA」対「ダイワ」, 「株式会社長崎屋本舗」対「株式会社ナガサキヤ」 ③ 観念→「マンパワー」対「ウーマンパワー」 「Oriental」対「東洋」 「印相学の総本家」対「印相学宗家」 4 具体的なあてはめ方 (1)まず,どのような外観・呼称又は観念か摘示。 (2)要部若しくは無視すべき部分の選択(要部とは,自他識別能力の強い部分。)。 ア 外観 ① 会社の商号や業務の種別を表す部分は通常自他識別能力なし。 a「株式会社ヤシカ」,「YASICA CO,LTD」対 「ヤシカ化粧品会社」,「YASICA COSMETIC CO,LTD」 →化粧品という文言が入っていることは類似性を否定する方向に機能しない。 b 「阪急電鉄株式会社」対「阪急電機株式会社」 →電鉄と電機の違いは類似性を否定する方向に機能しない。 ② 東西南北等方向や地域をあらわす文字がついても類否の判断に影響しない。東阪急ホテル事件 ③ 略号・略称部分や特定の文字(ないし組合せ)が特に自他識別能力を持つ場合があり,要部となることがある。 整髪料名称の「バイタリス」対「ハイドセブン」は非類似であっても,「V7」表示が加わることによって類似と判断される。 ④ 地名や一般名称は自他識別能力が低いため要部とならない。 イ 呼称 ① 略称・相性を要部として判断される場合がある。 「McDonalds」対「MacBurger」はいずれも略称が「マック」なので類似性あり。 (3)外観・呼称又は観念から(要部がある場合は要部から)どのような印象,記憶,連想をするかを摘示。 (4)外観・呼称又は観念の同一性ないし類似性を摘示。 (5)外観・呼称又は観念の同一性,類似性を総合的に判断(三者全てにおいて同一性ないし類似性が必要なわけではない。)。 (6)判断方法の特徴 ア 離隔的観察 時間,場所を異にして両表示を観察する手法 イ 商標法との相違 具体的な取引状況下で類似するか否かの判断が行われる。 以上:1,259文字
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