平成17年 7月 6日(水):初稿 |
○昨日は、自力救済原則禁止の話しをしましたが、例えば 「賃借人が賃料支払を6ヶ月分以上怠たり、且つ1ヶ月以上の期間賃貸人と連絡が取れない時は、賃貸人は錠前を交換することが出来、その後1ヶ月間賃借人から賃貸人に連絡がないときは、賃貸人は、賃貸物件に立ち入り、賃貸物件内にある動産を賃借人の費用負担において賃貸人が自由に処分することが出来る。」 と言うような条項は有効ですかとの問題提起をしました。 ○これは色々考え方が別れるところと思われますが、私は、やはり形式的には自力救済禁止の原則により無効と考えざる得ないと思っております。 ○しかし、自力救済完全禁止ではなく、許される場合もあります。刑法で言えば正当防衛に当たる場合です。 この民事上正当防衛として許されるのは、最高裁判例によれば、法律上の手続によったのでは、違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能または著しく困難であると認められる、緊急やむを得ない特別の事情がある場合で、更に自力救済によって守られるべき権利と、相手方の失う利益との比較、あるいは、相手方の不法の明白さの程度などから、社会的に是認される範囲で、自力救済をある程度認めてもよいと柔軟に認める学説もあります。 ○上記条項は最高裁判例の立場では有効とは認められませんが、柔軟な学説によればケースによっては有効と認められる場合も出て来ます。 ○賃貸借における自力救済禁止の有名判例は、家賃の滞納があったときは建物に立ち入ることができると定めた契約条項に基づいて賃借人に無断で建物に侵入し鍵を取り替えた行為が違法であるとして、賃貸管理業者の損害賠償責任が認められた事例です(札幌地方裁判所平成11年12月24日判決・判例時報1725号160頁) ○この例では賃貸建物の雨漏りでカビが生えそれを理由に賃料支払を停止したところ、賃貸人が一定期日までに賃料を支払わなければドアをロックすると通告し、支払がないことを理由に施錠を交換して建物を使用できなくしたもので、賃貸人に10万円の慰謝料支払が命じられました。 ○このケースと比較すれば6ヶ月賃料を滞納し且つ1ヶ月以上連絡不能状態の場合、勝手に施錠を交換し、更に1ヶ月の猶予期間をおいて残置物を処分しても、賃貸人に違法な自力救済として慰謝料支払を命じられることは先ず無いと思います。しかし残置物についての内容は写真に撮るなど確認しておく必要はあるでしょうね。 以上:998文字
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