平成17年 7月 5日(火):初稿 |
○賃料支払を怠る賃借人に対しては明渡の訴えを出し、それでも居座る賃借人には強制執行手続を取らざるを得ないところ、強制執行実現のための荷物の撤去・処分等の費用を賃貸人側で出さなければなりません。勿論、法律的には、賃貸人はこの費用を賃借人に対し請求できますが、賃料さえ支払えない賃借人は支払不能で実際回収は先ず無理です。 ○明渡の訴えから強制執行までの弁護士費用に加え、強制執行実費を加えると一旦貸した部屋を取り返すのには、相当の時間と費用がかかります。 ○そこで契約書に次のような定めがなされる例があります。 「賃借人が賃料支払を1回でも怠ったときは、賃貸借契約は当然に解除により終了し、賃貸人は、直ちに賃貸物件内に立ち入り、賃貸物件内にある動産を賃借人の費用負担において賃貸人が自由に処分することが出来る。この立ち入り処分について賃借人は一切異議の申立は出来ない。」 ○このような条項を自力救済条項と言います。 自力救済とは、自分の権利が侵害されたときに、法的手続きによらないでそれを回復すべく活動することを言いますが、現代法治国家では、これは一般的に禁止されています。このような自力救済を認めたのでは国家・社会の秩序が保てなくなるからです。そのためこのような条項は公序良俗違反で無効とされます。 ○しかしアパート賃借人が半年も前から行方不明となって賃料も支払わず電気も水道も止められ、部屋には食材等も放置され、異臭を放って衛生上も問題になるような場合、賃貸人としては、いちいち行方不明者賃借人相手に訴えを出して、これまで説明してきた強制執行手続を取るのも面倒に感じるはずです。 ○何とかアパートの居住者を捜し出し、本人から「賃貸借解除を承認し、部屋の残置物全ての所有権を放棄する」との一筆が取った上で、賃貸人が部屋の残置物を処分するのは問題ありませんが、このような行方不明者を捜し出すことは先ず不可能です。 ○そこで自力救済条項の要件を厳格にして例外的に認めても良いのではないかとも思います。例えば 「賃借人が賃料支払を6ヶ月分以上怠たり、且つ1ヶ月以上の期間賃貸人と連絡が取れない時は、賃貸人は錠前を交換することが出来、その後1ヶ月間賃借人から賃貸人に連絡がないときは、賃貸人は、賃貸物件に立ち入り、賃貸物件内にある動産を賃借人の費用負担において賃貸人が自由に処分することが出来る。」 と言うような条項の場合です。 (この条項が有効かどうかは後日検討します。) 以上:1,014文字
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