平成21年 8月 1日(土):初稿 |
・従業員型イソ弁は長く勤務しないのでは これまでの弁護士は、登録してイソ弁になってもいずれは独立して一国一城の主となるのが一般でした。ですからイソ弁時代から独立の備えて自分の顔を売り、個人の事件を増やして行き、ある程度目処がついたところで独立します。ところが従業員型イソ弁の場合は、個人の事件を持てませんので、いつまで経っても自分の事件がなく,独立の目処が立ちません。同期の弁護士同士の交流による情報交換もあり、自分の事件が持てるアソシエイト型イソ弁の話を聞くいて焦りを感じるなどして、従業員型イソ弁は長く勤務しないのではと推測されます。 ・従業員型イソ弁を長く勤務させるには ところが最近の新人弁護士には、独立志向のない人も増えているとも聞きます。これだけ司法試験合格者が増えて弁護士の過当競争時代に入りましたので、独立して一国一城の主になっても資金繰り等経営の苦労をすることが目に見えています。従って無理して独立するよりは、従業員型イソ弁で確実に給料を得て安定した生活をしたいとの願望を持つ人が増えることも不思議ではありません。しかしいくら仕事を取っても自分の収入が増えないとあればいずれ不満が出て来ますので、従業員型イソ弁においても昇級或いは歩合給等の経験と仕事量による収入増システムが必要です。この収入増システムの実際例について調査が必要です。 ・従業員型イソ弁が積極的営業をさせる解雇の恐怖 プレジデント2009.8.3号に「法律の新知識Q&A60」で東京在住弁護士が「聞くところによると、経験十数年のベテラン弁護士でも、しばらく稼ぎがなくなると、容赦なく事務所を解雇されたり放擲されたりすることが多くなっているそうだ。」と記述しています。「稼ぎがなくなると解雇される」ということは、稼ぎを事務所に上納することが前提となっています。上納率10割の完全給料制が従業員型イソ弁ですが、東京では上納率は兎も角、仕事を取れない弁護士は解雇されると言う事は、イソ弁自身が積極的営業を迫られている実態も出て来ているようです。 ・従業員型イソ弁が積極的営業をさせる見返りの保障 仕事が取れないと解雇される実態は,従業員型イソ弁に積極的営業を強いる契機になります。しかしより積極的に営業をさせるにはやはり仕事を取った結果の見返りが必要です。固定給プラス仕事を得た量に比例する歩合給があれば従業員型イソ弁も積極的営業を展開する契機になるはずです。前述の通りいくら仕事を取っても自分の収入にならず同じ給料で仕事だけ増えるのでは、却って営業意欲を抑制します。この従業員型イソ弁の営業見返り保障システムの実際例の調査も必要です。 ・従業員型イソ弁への福利厚生の充実の必要性 フランス弁護士会では従業員型イソ弁は殆どが大事務所の場合とのことです。経営(パートナー)弁護士だけで数十名以上居る大事務所では、おそらく顧問会社数も多く経営が安定し、従業員型イソ弁に対する福利厚生面も充実していると思われます。老後の生活保障のための公的年金だけでなく私的年金等にも加入し、病気・怪我等のアクシデントがあった場合の収入保障も厚くして、更に給料後払い積立金である退職金の保障も必要です。自分の事件が取れない不利益をカバーする充実した福利厚生があれば従業員型イソ弁も長く且つ積極的に勤務するものと思われます。 ・就業規則等の整備 上記福利厚生についてキチンと書面化してその保障を確実にすることが必要です。 ・まとめ 自分の事件を全く持てない従業員型イソ弁を長く勤務させ且つ積極的営業を展開させるには、自分の事件を自由に持てるアソシエイト型イソ弁より充実した生活保障があることが必須と思われます。それは 収入面では,固定給プラス仕事量に応じた歩合給 生活面では,充実した福利厚生と退職金制度の完備 等が必要と思われます。 しかしこれらの制度の充実には相当の経費増が伴い、この経費増とアソシエイト型イソ弁として自由に個人事件を持たせることのメリット・デメリットについての比較考量の上でどちらを採用するかを決定すべきでしょう。 このメリット・デメリットについて更に検討していきます。 以上:1,705文字
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