平成27年 9月 4日(金):初稿 |
○平成27年9月に入ったらしがない零細事務所である当事務所にとっては大型事件と言える負債総額数億円規模の事業債務整理事件の相談が2件入り、いずれも事件として受任することになりそうです。私は、事業債務整理事件は大好きで平成23年の東日本大震災前は、比較的多く扱っていました。ところが、大震災後パタリと受任がなくなり、大震災後受任した事業倒産事件はホンの数件止まりです。 ○「私的整理ガイドラインの基礎の基礎」に「この『私的整理ガイドライン』による任意整理による事業再建は、平成13年に公表されて以来、平成25年まで20数件しかなく、有利子負債額は大は2000~3000億円、小でも数十億円で、平均で数百億円であり、田舎のしがない弁護士が受任するような規模の事業者は全くありません。」と記載したように、当事務所で扱う倒産事件の規模はせいぜい7,8億円程度で、数十億・数百億規模の大型倒産事件を扱った経験はなく、今後もあり得ません。 ○当事務所にとっては数億円規模の倒産事件でも大型事件であり、大変勉強にもなる有り難い事件となります。倒産事件は、その事件毎に特殊性があり、正にケースバイケースで、ああでもない、こうでもないと色々どの方策がその事業にとって最良の整理方法かを柔軟に考えなければならず、それが大変興味深くまた私自身の研鑽になります。 そこで事業倒産事件方針概要についての備忘録です。 ・任意整理清算 「事業者債務整理任意整理チェックシート(未完成)」記載の通り、当事務所としてのスタイルをほぼ確立して扱っており、迅速・柔軟に処理できるのが最大のメリット。 強硬な債権者が居て、任意整理には応じないとして主要財産に仮差押手続等法的手続をとってくるような事案では適用は困難。また、債務者代理人弁護士は、法律知識だけを武器に素手で債権者と渡り合わなければならず、多少の腕力が必要。 ・任意整理再建 約定通りの支払では支払停止にならざるを得ない状況となった場合に、基本的には債権者各位に一定期間支払猶予を受け、その間、資金繰りを継続して、事業を立て直し、新たに返済計画を策定し、事業を再建するものですが、金融機関から一定期間支払猶予をもらうためには、結構、種々の条件を提示され、これを如何に充足していくかが鍵となる。 ・法的整理清算-破産 支払不能状況となった場合に、裁判所に自己破産手続開始決定申立をして、裁判所が選ぶ破産管財人が就任し、資産換価処分・配当財団形成を経て、最終的に債権額の一定割合を配当する手続ですが、例えば負債総額5億円の会社の場合、申立後速やかに200~300万円の予納金を裁判所に納めなければならず、債権者集会も相当先に設定され、任意整理に比べてお金と時間のかかる手続。そのため当事務所では、原則として自己破産手続は採りません。種々のケースがあるが、どうしても裁判所の力が必要な場合のみこの手続を採用。 ・法的整理再建-民事再生手続 債務超過で資金繰りが厳しい状況となった場合に、裁判所に民事再生申立をして、原則申立人(債務者会社)の財産管理処分権・業務遂行権は失わないが、裁判所が監督命令を出すと裁判所が選ぶ監督員の同意がないとできない行為が指定され、また裁判所が管理命令を出すと裁判所が選んだ管財人に財産処分権・業務遂行権が移転する。 再生手続開始決定が出ると債権者は、原則として個別の弁済・権利行使はできなくなり、裁判所に債権届出をし、最終的には再生計画案議決権を行使し、認可された再生計画案に従った弁済を受けるだけとなる。 申立人は一定期間中に再生計画案を裁判所に提出し、この再生計画案を債権者集会において決議し、裁判所が再生計画を認可するとこの再生計画案に従った弁済となる 再生計画案決議は、債権者集会議決権行使・書面等投票・両者併用のいずれかの方法で決議され、 決議要件は、 ①議決権者(債権者集会に出席し、または書面投票をした者に限る)の過半数の同意-頭数要件 ②議決権者の議決権の総額の2分の1以上の議決権を有する者の同意-議決権額要件 出席債権者の頭数および出席しない債権者も含めた議決権総額の過半数の同意がないと再生計画案は可決されない。 可決された再生計画案は裁判所は不認可要件がない限り、再生計画認可の決定をする。 民事再生手続が成功-再生計画認可決定を受けるためには、債権者の過半数の同意を得る必要があり、例えば1人の債権者が全債権の6割以上の債権を有している場合、その債権者の同意を受ける見込みがない場合、申立は無駄になる。 以上:1,866文字
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