平成21年 8月12日(水):初稿 |
○「神経症状後遺障害14級と12級の違い-概観」を続けます。 「私は、鞭打ち症の後遺障害で苦しむ方々で、後遺障害非該当であった方、14級、12級に認定された方々に実際に多く接していますが、その認定に大きな疑問を感じることがよくあります。 」と記載しました。このように感じるのは、鞭打ち症の後遺障害に限らず、骨折等の後遺障害で「頑固な」神経症状が残ったとして、後遺障害第12級を認定された方と「頑固ではない」として14級に認定された方或いは非該当とされた方の訴える症状を比較すると非該当の方の方が12級認定された方より相当ひどいと感じる場合も多々あるからです。 ○たまたま骨折等の器質的損傷があり、その結果他覚的所見ありとの診断となり、「頑固な」神経症状と認められ12級が認定されても実際の症状は大したことがなく、さほど苦痛に感じることはなく通院期間も短い例もあれば、打撲で骨折や創傷等の器質的損傷がなく、他覚的所見がないため後遺障害非該当とされても、症状的には相当ひどく、長く通院して痛み、しびれ等の苦しみから解放されない例もあります。 ○後遺障害非該当と14級認定の差も大変微妙です。 「本件事故による明らかな圧迫骨折や脱臼等の器質的損傷は認められず、後遺障害診断書上、神経学的に有意な異常も所見されず、症状を裏付ける他覚的所見に乏しい。」として後遺障害非該当 「頸椎捻挫後の頸部痛等の症状は、提出の頸部画像上、本件事故による骨折・脱臼等の器質的損傷は認められず、神経学的に有意な異常所見も認められないことから、他覚的に神経系統の障害が証明されない。」として後遺障害第14級に認定 この両者は、いずれも器質的損傷がなく、他覚的所見もないのですが、前者は後遺障害非該当、後者は14級止まりです。 ○自賠責保険実務では、痛みやしびれ等の神経症状が大したことがなくても、骨折・脱臼等の器質的損傷があり、他覚的所見があれば、「頑固な」が認定され、12級になる可能性が生じますが、器質的損傷がなく、他覚的所見もないとどんなに痛みやしびれ等の厳しい神経症状が長く続いても、良くて14級止まりで,殆どが非該当とされ、まして12級に認定されることはあり得ません。 ○この自賠責の後遺障害認定実務の問題は、「加茂淳整形外科医著作-生理機能のトラブル」で紹介した「痛みは生理的トラブルであり、レントゲンやMRIにその痕跡があらわれることはないのに、医師の殆どがレントゲンやMRIを使って痛みを説明しようとするところに大きな問題がひそんでいる。」との指摘そのものです。 ○加茂医師の「この悲劇は、構造上の異常が痛みの原因とする間違った勉強をさせられてきたことにあり、患者もそれを信じ込まされてきたので、医師は患者の痛みを治せなかった。」との指摘は、特に鞭打ち症後遺障害としての痛みやしびれに悩まされている方々を見ると実感します。しかし、裁判実務もこの後遺障害認定は、基本的に「構造上の異常原因説」に立っており、これをどうやって克服するかが問題です。 以上:1,249文字
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