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平成18年12月27日(水):初稿 |
○交通事故訴訟で事故による傷害及びその結果である後遺障害についてその程度や因果関係が争いになる場合、被害者側が主治医等の診断書を証拠として提出すると、殆どの場合、訴訟の実質的な被告である加害者示談代行保険会社では、顧問医等の意見書を提出してきます。 ○その意見書の内容は、保険会社の主張に判を押したようにピッタリと合致する内容になっており、ひどい例では自賠責保険で認められた等級が訴訟では争いになっていないのに、その自賠責保険の認定する否認する意見書を提出する例もあります。 ○私の取扱例で、側面衝突事故で頭部、胸部、腰部等がドアに激突して、鞭打ち、胸背部痛等に苦しみ、事故後2年間通院し自賠責調査事務所から後遺障害等級第12級が認められ、保険会社もこれを争っていませんでしたが、被害者としては少なくとも11級であると主張して裁判になった事案があります。 ○この訴訟で加害者側任意保険会社は自賠責保険会社が認めた12級については争っていないのに、顧問医意見書として「この程度の傷害は1週間も安静にしていれば治るものであり、2年間も通院したのは被害者の精神的問題があるからであり、現在の症状は加齢によるもので後遺障害第12級の認定は間違っている。」と当時40歳の被害者を侮辱し、名誉・信用を毀損する意見書を証拠として提出してきました。その作成者A氏は○○大学名誉教授、○○学会理事等のたいそうな肩書きの方でした。 ○私はこれを見て激怒し、保険会社側代理人に対し、誰の許可を得て被害者関係医療記録をA医師に見せたのか、またA医師は被害者を実際診察もせずこのような断定をするのは、被害者を侮辱し、名誉・信用を毀損するものだ、これを証拠として提出するならA医師と任意保険会社に対し損害賠償の訴えを提起すると啖呵を切り、証拠としての提出を止めて貰ったことがあります。 ○この保険会社顧問医等の意見書については、西川雅晴元弁護士「交通事故電脳相談所」の「意見書問題を考える」にその問題点が詳しく解説され、「意見書要約」に意見書例が記載されていますが、私自身も、保険会社が被害者医療記録を顧問医に見せ且つ意見書作成は目的外使用であり、何より、被害者を直接診察することなく意見書を作成することは許されないと認識しています。 ○意見書は、実質診断書であり、医師法20条の「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。」との規定に明らかに違反するものです。この違反には、同法33条の2で「50万円以下の罰金に処する。」と規定され、前記のような悪質なものには刑事告訴も検討すべきでしょう。 ○西川雅晴元弁護士は、令和元年12月31日弁護士登録を抹消されたとのことで、現在は、「ロンググッドバイ」というブログを掲載されています。「癌を患い、長いお別れをします」との副題がついていますが、ガンを患われている方には参考になるブログです。また、弁護士引退を決意された69歳の平成30年7月18日から令和元年12月23日までのおよそ1年半の間、「重き荷を解き放ち坂を下る日々」との副題で「弁護士引退日記」も掲載されており、弁護士業務や人生についての深い考察も記述されており、引退を検討している弁護士に限らず、大変参考になる記事が多数掲載されており、私も読んで勉強させて頂きます(※令和4年2月10日記載)。 以上:1,438文字
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