平成21年 5月13日(水):初稿 |
○「私が刑事事件について引退表明した理由2」を続けます。 難聴の進行で、ここ2,3年、「私が刑事事件について引退表明した理由2」に記載したような極端に声の小さい被告人だけでなく、普通に話す被疑者・被告人の声を接見室の強化ガラス越しに聞くことが苦痛になってきたことに加えて、裁判員制度の登場による法廷尋問中心主義裁判があります。 ○「初めての公判整理手続事件-調書に代わる尋問に苦労」に記載したとおり、裁判員制度によって、これまでの調書中心裁判が、法廷尋問中心裁判に変わります。法廷尋問中心裁判は、捜査過程で作成された供述調書は原則として法廷での尋問の参考資料にするだけで,法廷には提出されません。各供述調書の内容その他裁判で立証したいことは,証人或いは被告人本人が法廷で裁判官、裁判員の面前で話すことが大原則で,この法廷での直接供述が,事実認定のための証拠資料となります。 ○これは、直接主義と言って現行刑事訴訟法では、本来あるべき刑事裁判の姿です。しかし、実際、このあるべき姿をやってみると、慣れていないため大変でした。午前10時から午後5時まで丸1日かけて、証人尋問、被告人本人質問が続きましたが、難聴の私はこの尋問には大変神経を使います。私が質問するときは、難聴と断り、証人の直ぐ隣まで近づいて行いますので、聞き取りづらいときは、顔を近づけて聞き、それでも聞こえないときは、もっと大きな声でハッキリ話して下さいと要請できるから何とかなります。 ○ところが検察官、裁判官の質問の時は、弁護人席に居なければなりません。裁判員裁判は、裁判員も入るため特に広い法廷で行いますので、証人席から弁護人席まで結構な距離があります。検察官、裁判官は、普通の声或いは普通より小さい声の方も多く、質問者の声が小さいと答える方の声も小さくなるのが一般で、難聴の私は全神経を集中してその遣り取りに耳を傾けますが、聴き取れないことが多々あり、この焦りでグッタリと疲れます。 ○「サンフランシスコ報告5-法廷の補聴システムに大大感激」に記載したとおり,サンフランシスコの裁判所では、「裁判官も証人も代理人もマイクをシッカリ使用して難聴の私にも聞き取れる様にハッキリ話し」、更にワイヤレスヘッドホンシステムまでついていますので、私のような難聴者も弁護人として活動できます。しかし、日本の裁判所のマイクは単に録音するだけでスピーカーからの拡声はなされず、ましてワイヤレスヘッドホンなど夢のまた夢です。そこで刑事事件は卒業し、若いこれからの弁護士さんにお任せしようとなった次第です。 以上:1,067文字
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