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平成11年12月 1日(水):初稿 平成17年 4月 5日(火):更新 |
補 足 解 説Aさんの立場Aさんは、妻が後輩の学生と不倫を継続し激怒して、学生を責め学校を辞めさせる約束をさせます。妻は許そうと思っていますが、結局、妻とはうまくいかず離婚になりました。Aさんは、学生におそらく1000万円位の慰謝料請求が出来ないものかと弁護士に相談し相手が学生では取れないから止めた方が良いとアドバイスされたのでしょう。せめて大学院だけでも辞めさせて憂さを晴らそうと大学を辞めるとの念書を書かせました。しかし学生は、慰謝料も支払わず、大学も辞めずにのうのうとしています。Aさんは、踏んだり蹴ったりであると悶々としていました。 Aさんは離婚の心労で激やせし、風邪で入院するなど体調も崩し、本当に気の毒で、学生が何としても許せないと思う方も多いことでしょう。 Aさんの妻に対する対処ミス Aさんは、妻を許そうと思っていました。しかし残念なことに学生は許せないとして責め続けました。本当に妻を愛し今後も結婚生活を続けたいと思っていたのであれば、妻のみならず相手の学生も許すべきでした。いくら妻を許すと言っても不倫相手の学生が責め続けられたのでは妻は、自分が責められよりもっと苦しむはずです。ですから最終的に妻とは修復不能で離婚に至ったのは当然の結論でした。弁護士Bさんが言われるように「もう、その話には、関与しないという方向性」を歩むべきでした。しかし、現実には学生を許すという気持ちになるのは困難でしょうね。その気持ちは、「今となっては私としては不倫相手の学生が念書の内容を実行することをただひたすら 願うのみです。」との記述に如実に現れています。 不倫相手の責任補足 不倫相手に損害賠償請求が出来る根拠を復習すると独占使用権の侵害と言われています。結婚することで夫婦はお互いに貞操義務を負います。つまりお互いに相手以外とはHしてはいけませんよと言うことです。それが日本では一気にお互いに相手を独占してHする権利を持つと解釈されました。相互の独占使用権です。不倫相手はこの独占使用権を侵すからそれによる精神的苦痛に対する損害賠償義務を負うと構成されます。これを私は権利侵害説と呼んでいます。 しかし、考えてみると人が人を独占して使用するという考えは、人間を物と同じように扱うものであり、おかしいんじゃないかという批判が生まれました。結婚して生じる相互の貞操義務はあくまで当事者間の約束です。不倫することは当事者間では貞操義務違反になることは明白です。しかし不倫相手、このケースでは学生はAさんに対して何らの約束をしていません。Aさんの妻とHしたからと言って、Aさんに対する何らの約束違反もありません。独占使用権を認めない立場では、何らの約束違反もない学生はAさんに対してAさんの妻とHしても何らの責任もないのです。約束違反の責任を負うのはあくまで妻だけです。これを私は約束違反説と呼んでいます。 この考えを知っていればAさんは、約束違反した妻を許し且つ学生には何らの請求もせず、婚姻関係が破綻に至らず済んだかも知れません。 不倫相手についての考え方の変遷 日本の判例は、大正時代から独占使用権の考えを採り、不倫相手方には当然損害賠償請求が出来るとの立場をとってきました。ところが夫婦関係が実質的に破綻した後の不倫相手には、損害賠償請求が出来ないとの最高裁判例が登場し、流れが変わってきました。 江戸時代は、妻の不倫は打ち首獄門、戦前までは妻の不倫は姦通罪、それが戦後姦通罪が廃止され、不倫相手に対する損害賠償請求も破綻した夫婦関係の場合は認められなくなり、確実に不倫の責任は軽減される方向に動いています。 不倫行為に対する打ち首、姦通罪、損害賠償責任追及等の制度は、結局、社会で夫婦婚姻関係をどの程度保護すべきかの政策です。貞操義務を怠ったものには罰として打ち首、刑務所行き、金銭の支払義務等を課すことにより貞操義務を守らせ、夫婦婚姻関係を維持しようとしてきたわけです。 しかし夫婦関係の基本はあくまで当事者の気持ちの結びつきであり、その気持ちの結びつきは、打ち首、刑務所行き、金銭支払強要等の外圧で保とうとしても所詮形だけの結びつきに過ぎません。そこで外圧で夫婦婚姻関係の維持を図ることは止め、あくまで当事者間の意思に任せようという風潮が全世界的に強くなっております。 やがては不倫相手の損害賠償義務を否定するのみならず、夫婦当事者間でも不倫の損害賠償義務が否定される時代が来るかも知れません。夫婦間の貞操はあくまで個人の完全自由意思で守るべしとの考え方です。 それにより世の中不倫だらけになるか、或いは秘密性が無くなることで却って意欲減退し逆に減るかは予測が付きません。皆さんはどうお考えでしょうか。 さて、男女特集はこの辺で一旦終了し、次回からは親子特集を予定しております 以上:2,005文字
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