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第4章特許権侵害訴訟1担当(我妻)

平成17年 5月16日(月):初稿
第1 特許法の概要
1 特許制度の必要性と特許法の目的

 (特許法1条)
   ・この法律は,①発明の保護および利用を図ることにより,②発明を奨励し,③もって産業の発達に寄与することを目的とする。
        ↓
    特許発明の公開の代償として発明者に排他的権利を認め,第三者に発明を利用する機会を与える。

2 特許発明の意義と成立要件
 (1)特許法2条1項

   「発明」・・①自然法則を利用した②技術的思想の創作のうち③高度のもの
① 自然法則の利用・・「自然法則」そのものの知見は,発明とならない
万有引力の法則,相対性理論
~学問・科学の発展を阻害するから
        ・自然法則を利用していないものの例・・永久運動機関(東京高判昭48・6・29判タ298-255)

②技術的思想の創作・・何らかの作用効果の実現が必要
          ・用途の確認されていない微生物,植物,動物は,発明ではない。
              ・化学物質の製法も,作用効果を確認しうる実施例がないと発明とならない。
              ・技術は主観的なものではダメ・・カーブの投げ方,V字ジャンプの飛び方は発明とはならない。
              ・用途発明・・DDTを散布して殺虫する方法
              ・ビジネスモデル特許・・ビジネス方法を,コンピューターとインターネットを利用して行えるようにすることによって発明となる。

   ③高度であること・・実用新案との区別

3 発明の「種類」と発明の「実施」
 (1)発明の種類 

①物の発明
   「プログラム」は,物の概念に含まれることになった(平成14年改正)「プログラム」を保護するのは,特許法か著作権法か?

②方法の発明
   ・自動車エンジンの燃費向上の方法
   ・映像信号の伝送方法
   ・不安定な化学物質の貯蔵方法 
・「物の発明」と「方法の発明」の区別は,「経時的要素」「時間的要素」があるかないかによってなされる。

③物を生産する方法の発明
   ・化学物質の効率的な生産方法
   ・微生物を培養することによる抗生物質の製法
※ プロダクト・バイ・プロセス・クレーム

発明の具体的構成に変えて,その物の製造方法を特許請求の範囲に記載する方法
     ~化学物質の発明,バイオテクノロジーによる物質の発明

(2)実施
   ・物の発明・・生産,使用,譲渡,貸渡し,輸入,譲渡貸渡しの申出,譲渡貸渡しのための展示
   ・方法の発明・・方法の使用

4 職務発明(特許法35条)
  (1)職務発明の意義
・・①従業者の発明であって,②使用者等の業務範囲に属し,③発明するに至った行為が使用者における従業者等の職務に属する発明
    ①従業者の発明・・限定説―会社との間で雇用関係が必要
     非限定説―雇用契約に限定せず,委任,請負でもよい
     ※外部委託の場合や派遣社員の場合に問題となる。    

   ②使用者等の業務範囲に属すること・・現実に行われている具体的業務
業務範囲外で職務に属さないもの→「自由発明」は除かれる

    ③使用者における従業者等の職務に属する発明
     「職務」は,従業者等が使用者等の指示,要求に応じて行う業務である。
但し,具体的な指示がない場合でも,当該発明をなすことが当然に予定,期待されている場合も含む(最判昭43・12・13「室化炉事件」判タ330.194)。

(2)法的効果
  ①従業者等に特許を受ける権利が帰属する。
  ②使用者等は,職務発明について無償の法定通常実施権が与えられる。
   ~対価は不要。

③職務発明以外の発明についてなされた予約承継は無効である(特許法35条2項)

④使用者等は,職務発明について予約承継を受けることができ,なされた予約承継については,従業者等は対価を受ける権利を有する(35条2項の反対解釈)

(3)職務発明規定と発明報償制度
  ・すべての発明を企業担当部門に届出することを義務付けることは許される。
  ・譲渡証の提出を義務付けることは許される。

(4)相当の対価
  ・オリンパス光学工業事件―東京高裁平13・5・22判時1753・23
   「相当の対価の額についてまでは使用者が一方的に定めることはできない」
    ~従業者は,職務発明規程で定められた額に制約されず,合理的で適切な額として相当額を請求できる。
   ※平成16年改正法・・相当な対価の決定基準を例示した。


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