令和 1年 9月27日(金):初稿 |
○「『相続させる』旨の遺言でも代襲相続しないとの最高裁判決全文紹介」の続きです。ここで紹介した判決は、平成23年2月22日最高裁判決(判タ1344号115頁、判時2108号52頁)ですが、要旨は、「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないとしたものです。 ○民法第994条(受遺者の死亡による遺贈の失効)は次のように規定されています。 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。 2 停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。 ○前記最高裁判決事案概要は以下の通りです。 ・被相続人Aは、平成5年2月17日、子Bに全財産を相続させる旨の公正証書遺言作成 ・子Bは、平成18年6月21日死去し、同年9月23日にAが死去 ・Aのもう一人の子であるC(被上告人)が、A遺産である不動産共有持分権について法定相続分に相当する持分権があることをBの子Dら(被上告人)に確認を求める訴え提起 ・原審は、民法第994条により、BがAより先に死去したことで、A遺言は効力を失ったとして、Cの訴えを認容し、Dらが上告 ○民法第994条の規定は「遺贈」に関するものですが、「相続させる」とした場合も適用になるかどうか、即ち遺言は無効にならず、当該推定相続人の代襲者に「相続させる」かどうかについて争いがありました。この争いについて、前記最高裁は「適用になる」として決着をつけました。これによって、遺言者から、「相続させる」でも「遺贈」でも、財産帰属を認められた者が、遺言者より先に亡くなったら民法第994条によってその遺言は無効になるのが原則となりました。 ○但し、「遺言者が、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情」がある場合は、当該推定相続人の代襲者等に「相続させる」ことがあることに注意が必要です。前記最高裁判決事案で、Bの代襲相続人である子Dらから、相談を受けた場合は、一律に遺言は無効になるとは即断しないで、この「特段の事情」の有無について検討する必要があります。 ○前記最高裁判決は、「遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況など」との抽象的文言から「特段の事情」を判断するとしていますので、Dらの立場に立ってDらに相続させる具体的な「特段の事情」を見つけ出す作業も必要です。 以上:1,209文字
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