平成24年10月27日(土):初稿 |
○「法曹は社会の各分野で羽ばたけ、弁護士就職難対策2」での、「税理士資格や司法書士資格で弁護士業務には進出できませんが、弁護士資格では税理士業務・登記業務も可能であるとの資格の広さは大きな武器であることは間違いありません。この大きな武器をどのように使って顧客サービスを強化するかを必死に検討し,実践していく意欲が、これからの若い弁護士さんには必要です。 」との話を続けます。 ○私自身は、昭和55年4月に弁護士登録して既に弁護士経験32年になり、顧問会社は10数社しかありませんが、ある程度の顧客層があり、直ぐに仕事がなくなることはないと思われますが、これから多数の同業弁護士と競争しながらゼロから始める若い弁護士さんは大変な時代に入っており、いずれ、折角弁護士資格を取っても、弁護士では食えないとして他の業務に転身される方も出てくるはずです。仙台弁護士会でも,おそらくその方は,行政官の方が自分に合っていると思ったの最大理由と推測されますが、既に1名の方が弁護士を完全に止めて行政官に転身されました。 ○これからの厳しい時代を弁護士として生き抜くためには、これまでのように単に依頼された事件を淡々とこなしていくだけでは、仕事は来なくなるでしょう。多数の競争相手が居て、お客様側から多数の弁護士が居て、且つ、HP等で広範な業務広告がなされ、選択範囲が広がってきますので、特別に付加価値の高いサービスを提供しなければお客様を維持できなくなります。 ○数年前までは、多重債務・過払金返還請求事件が多数あり、これらの業務だけで若手弁護士も相当潤っており、弁護士業務なんて甘いと勘違いした弁護士も相当居ます。しかし、この過払いバブルは一時期のもので既に過ぎ去っており、このようなラクしてお金儲けが出来る甘い業務は、もう出て来ないと考えた方がよいでしょう。 ○過払いバブルの後は,交通事故事件に群がる弁護士が増えていますが、20年来交通事故事件に群がってきた経験者として語ると、交通事故事件は、本気で取り組むと多重債務・過払金事件より遙かに労力と時間がかかり、且つ、確実にお金になった多重債務・過払金事件と異なり、徒労に終わる場合も覚悟しなければならず、決して楽な事件ではありません。勿論、楽に解決できる事件もありますが、楽な事件ばかりやっていたのでは、事件処理の力量は付かず、また、大きな事件も来ません。何より、交通事故事件は、多重債務・過払金事件と異なり事務局に丸投げできません。 ○弁護士業務として魅力的分野としては相続分野があり、これも多くの弁護士が目を付けています。相続事件では、先ず相続人探しから始まりますが、時に数代前の先祖の相続手続事件などもあり、これは戸籍謄本・除籍謄本・改正原戸籍等多種の戸籍取寄から始まり、この戸籍取寄相続人確定業務は司法書士業務で、当事務所では慣れている司法書士さんにお願いしていましたが、最近は事務員が慣れて時前で出来るようになっています。相続登記も、特に難しい問題点を含む者でない限り、やる気になれば出来るはずですが,流石にこれは手を付けず司法書士さんにお願いしています。 ○相続事件では次に重要なことは遺産調査です。不動産登記簿調査から始まり銀行預金残高調査、特に不動産については評価額が重要になりますので、最終的には不動産鑑定士にお願いすることになりますが,それ以前に固定資産評価・路線価調査でおおよその目安が出来ます。財産及びその評価額が確定すると分配案の検討が必要です。財産が多く且つ細かく分かれているときは、表計算ソフト・データベースソフト等パソコン操作が必須で、これを手足の如く使いこなす必要があります。当事務所では勿論データベースソフト桐でのフォーマットが固まって大変重宝しています。 ○相続事件では相続税額の予測が必要であり、申告手続までまとめてやれればお客様は大喜びのはずです。相続税法は頻繁に改正されて、結構な勉強が必要になりますが、相続事件を専門にやろうと思うなら、簡単な相続税申告にシミュレーションが出来る位の知識が必要で、理想的には折角資格があるのだから、実際申告手続まで出来るようになるべきでしょう。 ○私のように長く弁護士業務に携わり、税理士さん、司法書士さん等人間関係が出来ているとその分野への進出は出来ませんが、これからの若い弁護士さんは、サービス強化の一環として幅広いサービス提供体制が必要であり、甘いことを言っている年寄り弁護士から仕事を奪う位の気概を持って、幅広い勉強に励む必要があります。 以上:1,865文字
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