平成25年 2月15日(金):初稿 |
1.中小企業金融円滑化法(以下、単に法と言う)とは 第1条(目的) この法律は、最近の経済金融情勢及び雇用環境の下における我が国の中小企業者及び住宅資金借入者の債務の負担の状況にかんがみ、金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保に配意しつつ、中小企業者及び住宅資金借入者に対する金融の円滑化を図るために必要な臨時の措置を定めることにより、中小企業者の事業活動の円滑な遂行及びこれを通じた雇用の安定並びに住宅資金借入者の生活の安定を期し、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。 中小企業が対象 中小企業とは、法第2条第2項に定義されているが、資本金3億円以下、従業員数300人以下が主要定義 日本全体の企業数の99.7%に当たる420万社が中小企業、従業員数は全体の66%の2834万人が従事 返済猶予の申出し、同時に試算表・資金繰り表等資料、3ヵ月から半年以内に経営再建計画を提出し、銀行の承認があれば返済猶予が認められ、「格付け低下」も免れる 申出の90%以上が承認され、平成24年3月末現在で289万3387件、総額79兆7501円に上り、猶予してもらった実際の企業数は、中小企業の10社に1社に当たる30~40万件と推定。 このうち金利返済すら出来ない企業数は2割前後の5~6万社 2.銀行の貸付するときの基準 銀行は「晴れているときには傘を貸してあげると言ってくるが、いざ雨が降ってくると傘を取り上げに来る」ことの覚悟が必要 では、銀行の融資基準はどうなっているか。 (1)債務者区分と信用格付け-「金融検査マニュアル」から ①債務者区分「正常先」:業況が好調であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者 信用格付け 格付1:債務履行の確実性は極めて高い水準にある 格付2:債務履行の確実性は高い水準にある 格付3:債務履行の確実性は十分にある 格付4:債務履行の確実性は認められるが、将来景気動向、業界環境等が大きく変化した場合、その影響を受ける可能性がある 格付5:債務履行の確実性は当面問題ないが、先行き十分とは言えず、景気動向、業界環境が変化した場合、その影響を受ける可能性がある 格付6:債務履行は現在問題ないが、業況、財務内容に不安な要素があり、将来債務履行に問題が発生する懸念がある 貸倒引当率0.14~0.5 ②債務者区分「要注意先」:金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済若しくは利息支払が事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者 信用格付け 格付7:貸出条件、履行状況に問題、業況低調ないしは不安定、財務内容に問題等、今後の管理に注意を要する 貸倒引当率1~10 ③債務者区分「破綻懸念先」:現状、経営破綻の状況にないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む)。 信用格付け 格付8:現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる 貸倒引当率15~40 ④債務者区分「実質破綻先」:法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者。 信用格付け 格付9:法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められる等実質的に経営破綻に陥っている 貸倒引当率70 ⑤債務者区分「破綻先」:法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者。例えば、破産、清算、会社整理、会社更生、和議、手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている債務者 信用格付け 格付10:法的・形式的な経営破綻の事実が発生している 貸倒引当率100 「要注意先」と「要管理先」のラインが企業の死命を制する-「要管理先」以下が不良債権と呼ばれる。 (2)銀行の債務者区分・信用格付け評価基準 数値に換算できる「定量評価」と換算できない「定性評価」があるが、「定量評価」に重きがおかれる。 定量評価とは,名目ではない実態の貸借対照表・損益計算書のことで、売掛金からの不良債権除外、商品から不良在庫除外、建物償却不足訂正等補正後の実力値としての貸借対照表、倒産時に発表する非常貸借対照表に近いか? 経営者が健全財務体質と考えても、「こんなに不良債権が多いのでは生き残れないな」と考えるのが銀行 以上:1,945文字
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