平成24年12月20日(木):初稿 |
○当事務所は、事業倒産事件を取り扱うことが多く、毎月1件ずつ事業倒産事件を受任した年もあったのですが、ここ数年受任件数が少なくなり、平成23年3月11日の大震災後は、郷里気仙沼市のある中小企業の任意債務整理事件を1件受けただけです。この企業は、大震災の津波で事業建物が跡形もなくなり、代表者も津波に巻き込まれて死去し、事業継続は到底不可能な状況になってのご依頼でした。 ○「事業債務整理任意整理の利点-迅速柔軟性」以下や、「事業倒産任意整理の柔軟性-生命保険金使途1」以下に記載したとおり、私は事業の倒産整理事件が大好きで、相当の件数を取り扱っていますが、原則として破産手続は取らず、任意整理方式で、自慢のデータベースソフト桐による倒産整理システムを駆使し、迅速配当を旨として処理します。 ○ところが、この大好きな事業者任意倒産整理事件が、東日本大震災後僅か1件しか入らず、不思議に思っていましたが、どうやら、平成21年成立「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」の恩恵により倒産が回避されていたからのようです。 ○多数の失業者が出る倒産は出来る限り回避する努力をすべきですが,事案によっては、思い切って清算して、可能であれば新規事業としてやり直したり或いは他の企業に営業譲渡するなどの方策を取った方が失業者数も少なくなり、社会的損失が少ない場合が多くあります。また、金融円滑化法附則第2条は「この法律の失効」として、「この法律は、平成25年3月31日限り、その効力を失う。ただし、同日までに行われた第4条第1項に規定する申込み、同条第2項に規定する確認及び同条第3項に規定する求め並びに第5条第1項に規定する申込みに係る事案については、同日後もなおその効力を有する。」とあり、終了後も「効力を有する」事項等について徐々に勉強していきます。 **************************************** 金融円滑化法 利用後の倒産7割増 ゲンダイネット(2012年9月15日10時00分) 企業の倒産動向が不気味な動きを見せ始めた。8月の全国倒産件数は967件と前年同月比5.75%減(東京商工リサーチ調べ)。8月としては過去20年間で最少だった。この数字を見る限り、経営環境は悪くない。 ところが、「倒産が1000件を下回るのは好景気のときだけ。どう考えてもおかしい」とクビをかしげる関係者が続出している。 東京商工リサーチ情報部の関雅史氏も言う。 「中小企業の倒産が金融円滑化法で先延ばしされているからです。しかし円滑化法は来年3月で終了。すでに金融機関は貸出先の債務者区分見直しをスタートさせています。秋以降、中小企業の倒産増加は避けられないでしょう」 実際、円滑化法を利用した企業の倒産は激増している。今年1~8月は144件。前年同期比で何と7割増だ。 「90年代後半から00年代にかけての悪夢が蘇ります。当時、小渕内閣は中小企業の倒産を食い止めるため総額30兆円の『特別保証制度』を実施しました。その効果で99年の倒産件数は前年比20%近く減少。だが、その翌年は負債総額で戦後最悪、倒産件数も75%増の約1万9000件に悪化したのです。特別保証制度は倒産を先延ばしさせただけでした」(市場関係者) 8月度の原因別倒産を見ると、いかに“倒産先延ばし”が多いかが分かる。「既往のシワ寄せ」(赤字累積)が46.7%増だったのだ。 「円滑化法で倒産を逃れてきた中小企業がバタバタと倒れ出したため、赤字累積による倒産が増加したのでしょう」(関雅史氏) 円滑化法を利用中の中小企業は約30万件。「うち2割は先延ばし組」(市場関係者)といわれる。6万社の倒産予備軍だ。 過去最悪の倒産件数は円高に襲われた84年の2万841件。今年も超円高に企業は苦しめられている。最悪更新を覚悟すべきかもしれない。 (日刊ゲンダイ2012年9月12日掲載) 以上:1,640文字
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