平成17年10月31日(月):初稿 |
○平成17年10月29日更新情報事業倒産「任意整理の柔軟性-生命保険金使途2」に続けます。 D弁護士からB社倒産の任意債務整理事件の応援依頼を受けた私は、亡A社長の妻Cさんから詳しく事情を聞きました。Cさんは、夫Aの生命の代償の保険金をA個人保証債務に優先的に支払われるのが当然ではないかと訴えます。 ○私はそれまで事業倒産任意債務整理事件を数多く経験してきましたが、事件にはそれぞれ異なる特徴があり、画一的処理には馴染みません。私は先ず債権者の顔ぶれを拝見し、次に大口債権者との取引経緯を確認して方針を決めます。 ○このA社長は真面目な方で僅かの取引期間で倒産事態となった債権者は殆ど無く、多くの債権者は長い期間の取引がありました。取引が長い債権者ほど倒産に至った相手方に寛大になり、自殺まで追い込まれたA社長に同情的と見られる債権者も多くいました。 ○Cさんには、自宅(時価2000万円)、アパート(時価2000万円)、貸家(時価1500万円)全てを維持するとなると債権者の反発もあるので、貸家は債権者に提供する用意はありますかと聞くと、自宅とアパートが残れば何とか生活が出来ますと答えてくれました。 ○そこで私はB社の任意債務整理事件をD弁護士と共に受任し、受任通知後速やかに生命保険金1億5000万円を回収し、次に全債権者に対し端的に生命保険金1億5000万円はAさんの個人保証債務に優先充当させて欲しいと訴えその回答を求める通知を出しました。 ○Aさん個人保証債務充当理由として、生命保険金無しのB社資産のみでの予想配当率が10%にも満たないこと明示し、生命保険金を個人保証債務に充当しても、3000万円を残りの一般債権者配当に回すことが出来、且つAさん個人所有で無担保となった貸家を売却して一般債権者への配当原資とすること、Aさんの遺志は何とか病弱の妻Cさんの生活を守ることにあったことを力説して何とかCさんの願いを聞いて欲しいと訴えました。 ○その結果、殆ど全債権者から生命保険金1億5000万円をAさん個人保証債務に充当することについての書面による同意を得ることが出来、受任通知発送後、1ヶ月後には、第1回配当を実施しました。債権者は何より迅速な配当を希望するからです。 ○その後、B社の売掛金回収、動産類売却も順調に進み、貸家も予定通り1500万円で売却が出来て、最終的には受任後半年程度で一般債権者にも90%近い配当を実現し、Cさんは無担保の自宅とアパートを維持出来、その後の生活も確保できました。任意債務整理の柔軟性を示す一例です。 以上:1,061文字
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