平成17年10月 4日(火):初稿 |
○私は事業債務整理は任意整理を原則としていると繰り返し述べてきましたが、任意整理のメリットとして大きなものは処理の柔軟性が図れることです。 ○柔軟性を発揮した処理の一つに労働債権の最重要視があります。 倒産処理手続は、債務超過に陥った企業を営業を廃止し、弁護士が実質的清算人として倒産企業の売掛金回収、資産売却等により資産を換価して、集めた現金を債権者に公平・平等に配当する手続ですが、法によって配当の優先順位が決まっています。 ○その優先順位は、平成16年に破産法が大改正されるまでは労働債権より税金が優先されていました。資産換価処分で現金を1000万円集めても、未納の税金が1000万円あれば、例え未納労働債権が500万円あっても先ず1000万円の税金を支払い、労働債権の支払は出来ませんでした。 ○この場合、労働者は賃金の支払の確保等に関する法律(賃確法)によって労働基準監督署の給料立替支払制度を利用することが出来ますが、その手続は煩瑣で支払額に上限があり、労働者にとって完全な制度ではありません。 ○そこで私は事業の任意債務整理に当たっては、税金がたとえいくらあろうと労働債権を最重要視して集めた現金は先ず労働債権の支払に充当してきました。整理終了時に清算結果として収支明細ーいくら集めてどこにどのように支払ったかの明細ーを報告してきましたが、税金より労働債権を優先して支払ったことについて当局より抗議されたことはなく、大目に見られてきました。 ○しかしバブルが崩壊した10年数位前から事業倒産の通知を出すとその日の内に売掛金債権に税務署の差押が入るようになり、労働債権支払のため解除されたいと要請しても頑として受けつけなくなりました。税務署側も税収確保のため危ないと思われる企業の売掛先を詳細に調査しています。 ○そこで売掛金があっても税務署の差押が予想される事案では、倒産通知直前に売掛金を労働者に労働債権額の範囲で債権譲渡し、倒産通知と同時に債権譲渡通知を出すなんとことをしたこともあります。 ○破産手続では厳格に法に従って処理するため未納労働債権があっても破産管財人は先ず税金に支払いその結果支払財源が無くなっても後は賃確法を適用しなさいとの冷たい態度になりますが、昨年の破産法大改正でようやく税金より労働債権が優先することが規定され、私の方針が認められた気がして嬉しくなったものでした。(この話題後日に続けます。) 以上:1,001文字
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