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平成24年 9月20日(木):初稿 |
○「交通事故加害者の被害者に対する対応-弁護士紹介?」を続けます。 交通事故加害者の任意保険会社が被害者に対する賠償金を出し渋り、被害者から保険会社が支払わないなら、直接の責任者である貴方が支払えと支払を強要されて困っている例が結構あります。多くの場合、保険会社が弁護士を代理人としてつけて弁護士に対する請求以外受け付けないと被害者の加害者に対する直接請求をシャットアウトしますが、真面目で被害者思いの加害者である程それが受け入れられず苦悶することになります。 ○以下に東京海上のTAPの平成11年版と平成24年版各約款の最も肝腎の部分を紹介します。新版の方の表現が洗練されてきていますが、基本的にはおなじことを言っています。 第1条の「保険金を支払います。」とは、保険会社が加害者(被保険者)に対して保険金を支払うことで、第6条の「損害賠償額の支払を請求することができます。」は、被害者が保険会社に請求することです。この2つの規定からは、「被保険者(加害者)が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害」即ち最終的には判決で認められた加害者の被害者に対する損害賠償責任額は、保険会社が加害者に支払い、被害者が保険会社に直接請求したときだけ、保険会社は加害者に直接支払うのが大原則です。 ○だとすると交通事故が発生して加害者責任が生じた場合は、加害者は保険契約に基づき保険会社に「被保険者(加害者)が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害」を自分に支払えと請求出来ることになり、両者の関係は明白な利益相反です。ですから被害者のために加害者が弁護士を代理人として保険会社に保険金を支払えと請求出来て然るべきですが、実務ではこのような形で加害者が弁護士を代理人として保険会社に請求する例は殆どありません。 ○というのは、加害者側の代理人は、保険会社がその顧問弁護士を斡旋して付けるのが一般であり、そのため保険会社顧問弁護士が、加害者側の代理人として被害者のためではなく、保険金を支払う保険会社ために、保険金支払金額を出来るだけ少なくするための活動をするからです。 ○私は、この当たり前と思われている交通事故保険金支払実務はおかしいと随分前から憤りを感じて、まず、保険会社顧問弁護士が加害者本人の代理人として登場することをシャットアウトするため、加害者本人には請求しないことを宣言して、保険会社に直接請求するスタイルを取っています。保険会社顧問弁護士が加害者代理人になると名は加害者でも実は保険会社代理人であり、直接請求の場合は、名実供に保険会社代理人となり、顧問弁護士にとっても都合が良いはずです。 ○現在、ある加害者の深刻な悩みを聞いて、上述の「被害者のために加害者が弁護士を代理人として保険会社に保険金の請求をする」体制も作らなければならないと真剣に考えております。上記の通り、本来、事故の発生により、加害者と保険会社は利益相反関係になりますので、加害者保険会社顧問弁護士が加害者の代理人になるのは明らかに弁護士職基本規程に反すると思われますが、これが当たり前の如く通用している交通事故実務を如何に変えていくか、その方策を考えていきたいと思っております。 *********************************************** T・A・P総合保険約款(99年11月版) (東京海上火災保険株式会社) 第1章 賠償責任条項 第1条(当会社の支払責任-対人陪償) 1.当会社は,保険証券記載の自動車(以下「被保険自動車」といいます。)の所有,使用または管理に起因して他人の生命または身体を害すること(以下「対人事故」といいます。)により,被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して,この賠償責任条項および一般条項に従い,保険金を支払います。 2.当会社は,1回の対人事故による前項の損害の額が自動車損害賠償保障法に基づく責任保険または責任共済(以下「自賠責保険等」といいます。)によって支払われる金額(被保険自動車に自賠責保険等の契約が締結されていない場合は,自賠責保険等によって支払われる金額に相当する金額。以下同様とします。)を超過する場合にかぎり,その超過額に対してのみ保険金を支払います。 第6条(損害賠償請求権者の直接請求権-対人賠償) 1.対人事故によって被保険者の負担する法律上の損害賠償責任が発生した場合は,損害賠償請求権者は,当会社が被保険者に対して支払責任を負う限度において,当会社に対して第3項に定める損害賠償額の支払を請求することができます。(中略) 第13条(支払保険金の計算-対人賠償) 1.1回の対人事故につき当会社の支払う保険金の額は,次の(1)および(2)の合計額から(3)の額を差し引いた額とします。ただし,生命または身体を害された者1名につき,それぞれ保険証券記載の保険金額を限度とします。 (1)被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額 (2)前条第1項第1号から第3号までの費用 (3)自賠責保険等によって支払われる金額 2.当会社は,前項に定める保険金のほか,次の額の合計額を支払います。 (1)前条第1項第4号および第5号の費用 (2)前条第2項の臨時費用。ただし,1回の対人事故により生命または身体を害され た者1名につき,次の額を限度とします。 (イ)前条第2項第1号に該当するときは,10万円 (ロ)前条第2項第2号に該当するときは,2万円 (3)第5条(当会社による解決-対人賠償)第1項の規定に基づく訴訟または被保険者が当会社の書面による同意を得て行った訴訟の判決による遅延損害金 TAP(一般自動車保険)2012年10月1日~始期契約 第1章 賠償責任保険 賠償責任条項 第1条(この条項の補償内容) (1)当会社は,対人事故により第2条(被保険者)に規定する被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して、この賠償責任条項および基本条項にしたがい、第4条(お支払いする保険金)に規定する保険金を支払います。 (2)当会社は,対物事故により第2条(被保険者)に規定する被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して、この賠償責任条項および基本条項にしたがい、第4条(お支払いする保険金)に規定する保険金を支払います。 (3)この賠償責任条項において対人事故および対物事故とは、下表のとおりとします。 ①対人事故;ご契約のお車の所有、使用または管理に起因して生じた偶然な事故により他人の生命または身体を害すること。 ②対物事故;ご契約のお車の所有、使用または管理に起因して生じた偶然な事故により他人の財物を損壊すること。 第4条(お支払いする保険金) (1)1回の対人事故または1回の対物事故について、当会社は下表の規定にしたがい、保険金を支払います。 保険金の名称 ①対人賠償保険金 保険金をお支払いする場合 対人事故により被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害。ただし、その損害の額が自賠責保険等によって支払われる金額(*2)を超過する場合に限ります。 お支払いする保険金の額 次の算式によって算出される額 ただし、生命または身体を害された者1名について、それぞれ保険証券記載の対人保険金額を限度とします。 「対人事故により被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額」+「(2)の表の①から③までの対人事故に関する費用の額の合計額」-「自賠責保険等によって支払われる金額()*2」 第6条(損害賠償請求権者の直接請求権) (1)対人事故または対物事故によって被保険者の負担する法律上の損害賠償責任が発生した場合は,損害賠償請求権者は,当会社が被保険者に対して支払責任を負う限度において,当会社に対して(3)に規定する損害賠償額の支払を請求することができます。(中略) 以上:3,259文字
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