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令和 4年10月 1日(土):初稿 |
○横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和4年10月1日発行第3265号「弁護士の千三つ」をお届けします。 ○大山先生は、お芝居や音楽会に週1回は行くとのことで、大変、素晴らしいことです。それが、溢れる教養の源の一つになっていると思われます。私は、一日1本の映画を観ることが出来るようになるのが夢ですが、現実には週1本にもいきません。。 ○弁護士の千三つを読んで、「実をいうと、全く嘘をつかずにこの世の中に生き長らえることは、全然不可能なようにこの世の中ができているのです。」と始まる末弘厳太郞博士の「嘘の効用」という論文を思い出しました。 ○その中で末弘博士は、大岡越前守を「裁判官の理想、名法官である」と断定し、その理由を「大岡越前守の裁判は、なにゆえに人情の機微をうがった名裁判だといわれるのであろうか。一言にしていうと、それは「嘘」を上手につきえたためだ、と私は答えたいと思います。」、「大岡越前守が嘘つきの名人であったことは事実です。」なんて書いています。大山先生も「嘘つきの名人」と思えてきましたが、正直を旨とする私も、一歩でも近づきたいと思っています(^^)。 ******************************************* 横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作 弁護士の千三つ 「千三つ」というのは、「千」話す中に、本当のことは「三つ」しかないという、「嘘つき」のことです。先日テレビドラマで、「正直不動産」というのをやっていました。ドラマによると、不動産屋さんというのは、調子の良いことばかり言う、「千三つ」の仕事なんだそうです。このドラマの不動産屋さんは、呪いを受けて、正直なことしか言えなくなってしまうんですね。例えば、ペアローンを組んで、自宅を購入しようとする夫婦がいます。こういう人たちに、「今は良いですが、万が一離婚するときには、凄い負担になります」なんて、本当のことを言ってしまうわけです。こういう「正直」は確かに良いことのように思えます。 ただ、そんなこと言えば、「結婚」自体に大きなリスクがありますよね。結婚式で牧師さんが、「結婚は良いですが、離婚のときにはこんなリスクがあります」なんて「正直」に話したら、すべてぶち壊しのような気もするのです。そもそも、確かに「正直」は良いことですが、時と場合によるような気もします。以前採用面接のときに、「他にこういうところも受けています」と話したうえで、「そちらが第一希望です」みたいな事まで、「正直」に話してくれた人がいました。私もそうでしたが、他の面接者の評判も悪かったです。「こういう人を採用したら、うちに不利なことでも、なんでもペラペラしゃべりそうだ」と心配になるのです。 大体において、「正直」なのは、自分が強い立場だと思っているからだというのもありそうです。以前、刑事弁護の大御所が法律雑誌で、事務所の失敗を「良い話」として堂々と公表していたのを読みました。顧客から受けた案件を丸投げされた若手弁護士が失敗したという話です。そのお客さんからしたらとんでもない話でしょう。でもこの弁護士は、「こういう失敗をしながら成長する」みたいな、「良い話」として「正直」に発表していたのです。別に嘘をついた方が良いとは思いませんが、どうにも釈然としなかったのです。 まあ、こういう「正直弁護士」はともかくとして、一般的にいうと、弁護士以外の人の方が「嘘」を気にするのではと感じています。刑事裁判で、被告人の親族に情状証人としてきてもらうことはよくあります。最後に、「今後しっかりと本人の監督をすると約束できますね?」なんて質問します。これなんか「儀式」みたいなものですから、力強く「はい。約束します」と答えて貰えればそれで終わりです。でも人によっては、「もう息子は私の手には負えません。そんな嘘を付けません」なんて拒否する人もいます。そんなこと、裁判官も検察官も分かっていますから、ここは「はい」と言って欲しいのです。ううう。。。 こういう人は結婚式で「病めるときも、相手を愛しますか?」と聞かれて、「そこまでは約束できません」なんて言いそうで心配です。 確かに、結婚した人の三人に一人は離婚する現状では、安請け合いは「嘘」になるんですけど、この辺も気合いで答えるのが、常識人ですよね。しかし、こう考えてきますと、一般の人はほとんど「千三つ」のような気がしてきたのです。実際問題、私が不治の病にかかった場合、お医者さんが正直にいうのは勘弁してほしいです。そんなことされた日には、更に病状が悪化しそうです。 弁護士の場合も、似たようなことはあります。裁判等での見通しをどこまで「正直」に説明するのか、難しいところはあるのです。特に、顧客が当方の見解とは違うことを考えているときには悩みます。それとなく伝えているのですが、なかなか納得してくれないことはあります。ただ、そういうときでも、正直にダメというより、励まして一緒に真剣に対応して、結果として負けたときの方が、お客様からの評価は高いということもあるのです。まさに、「あいつと一緒に天国に行くより、あなたと一緒なら地獄でもいい」ということがあるんですね。「正直」が大切なのは確かですが、そう言って貰える弁護士にもなりたいのです。 ******************************************* ◇ 弁護士より一言 お芝居や音楽会に週1回は行きます。でも、全く寝ないでいられるのは、千に三回程度しかないのです。隣の席の妻が私を見張って?少しでもウトウトすると「もっと気持ちよく熟睡するために、無呼吸症候群のあの器具を、これからは持ってこようよ !」なんて言います。で、でも、私の観察だと、妻も必ず寝ているように見えますが、正直に認めてくれないのです。。。 以上:2,432文字
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