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2021年08月01日発行第298号”弁護士のカサンドラ”

令和 3年 8月 1日(日):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和3年8月1日発行第298号「弁護士のカサンドラ」をお届けします。

○カサンドラ症候群という言葉は、何かで聞いた記憶があったのですが、内容は殆ど覚えていませんでした。ネット検索すると、カサンドラ症候群とは、家族やパートナーなど生活の身近にいる人がアスペルガー症候群(現在の診断名は自閉症スペクトラム障害)であることが原因で、情緒的な相互関係を築くことが難しく、心的ストレスから不安障害や抑うつ状態、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの心身症状が起きている状態を指す言葉と解説されています。

○アスペルガー症候群は、良く聞く言葉で、実際そういう症状という方の依頼を受けたことがあり、コミュニケーションを取るのに随分苦労した記憶があります。離婚事件等家族問題で深刻な状況にある方は、程度の差はあれ、躁うつ病・不安障害・心身症等、精神に何らかの問題のある方が多く、コミュニケーションを如何にうまく取るかが課題となります。

○精神に何らかの問題のある方とのコミュニケーションの取り方は、兎に角、その何らかの問題について、全て受け容れることが先ず重要と自覚し、問題のない方と比較して、普通は、こんなことはしない、或いは、言わないと否定的に応対しないことが重要と思っております。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士のカサンドラ


カサンドラというのは、ギリシャ神話に出てくるトロイの王女です。トロイ戦争の最後の場面で、「敵が残した巨大な木馬を城に入れたら、木馬の中から出て来る兵隊によってトロイが滅ぶ」と皆に話すんですが、誰も信じてくれない。滅亡を知りながら止められなかった、悲劇の王女です。カサンドラの言うことを誰も信じなかった理由についても、ギリシャ神話には説明があるんです。神様がカサンドラに言い寄ったとき、彼女の気を引こうとして、未来を見る能力を与えたそうです。ところがカサンドラが、その能力で未来を見ると、自分に飽きた神様によって捨てられるとことが分かります。そこで、神様を振ってしまうんです。振られた神様は大人気なく、カサンドラに仕返しをします。カサンドラが未来について話しても、誰も信じてくれないという呪いをかけたのです。

初めてこの話を詠んだとき、「よくこんなこと考え付くな!」と感心したのを覚えています。カサンドラのように、未来について明確な見通しを持って警告しても、誰にも相手にされないということあります。太平洋戦争のときでも、「戦争をすれば日本は負ける」と警告していた人は居ました。しかし、マスコミにも、ほとんどの国民にも相手にされませんでした。

後から見れば正しい主張をしていたのに、誰にも信じてもらえなかったという事例は、あらゆる分野でありそうです。法律の世界でも、ほんの少し前までは当然と思われていた制度や判例が、変更されることはあります。変更前に、「今のままでは大変なことになる!」と警告する人も居ますが、ほとんど無視されるようです。その一方、「大変だ、大変だ!」と言う人の警告を、どこまで真剣に考えるべきか、悩んでしまうケースが沢山あることも事実なのです。

つい先日、建築会社の社長が、「コロ ナのワクチンを打った人は、5年以内にみんな死ぬ。ワクチンを打った社員は、出勤禁止にする!」なんて発言して、大炎上していました。普通の人から見れば、「何を馬鹿なことを!」としか思えません。でも、本人にしてみれば、「ワクチンは身体に毒を入れて人を滅ぼすトロイの木馬なのに、何故みんな分からないのか!」と思っていそうです。

弁護士をしていると、こういった「カサンドラ」からの相談が、何度もあります。「電波」なんか多いですね。例えば、携帯の電波は、日本を滅ぼす、アメリカ軍の陰謀だそうです。「そのことに気が付いて、皆に警告していたところ、米軍機が飛んできて、空から監視されるようになった。誰に話しても信じてもらえないから、弁護士を頼ってきた」と言われたのです。「私は信じますが、一弁護士がそのような権力と闘うことはできません」と話して、お引き取り願ったのです。(おいおい。。。)

法的紛争においても、「自分の考えが絶対に正しいのに、何故誰も分かってくれないのだ!」という感じで話してくる方はかなりいます。「その様な主張は、今の法律や判例からは認められません」といくら説明しても、なかなか納得して貰えないのです。「自分の主張が認められないなら、もう日本は終わりだ!」みたいに言われると、「このまま依頼を受けていて良いのだろうか?」と、悩んでしまいます。国の滅亡みたいな深刻な問題点ではなくても、「ここはこうした方がベター」みたいな、細かい点がよく見えて、とても気になる人っていますよね。弁護士にもいるのです。普通の弁護士なら気にしない問題点を指摘して、「このままでは大変なことになる!」と、依頼者に説明します。しかし多くの場合、そんな細かい点を気にして騒ぐ弁護士より、大局を見て「大丈夫!」と言ってくれる弁護士の方を、依頼者は評価するように思うのです。

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◇ 弁護士より一言

不摂生がたたり、体重が相当増えてしまいました。一念発起して、食事制限で減量することを決意したのです。決意しただけで私は、1年後にすっかりスマートになった自分の姿が浮かんできました。会う人ごとに、「1年後の私は、信じられないほど痩せていますよ!」と教えてあげるのに、誰も信じない。カサンドラの無念さが、私にも理解できたのでした。
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