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2012年12月1日発行第90号”利己的な弁護士”

平成24年12月 1日(土):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成24年12月1日発行第90号「利己的な弁護士」をお届けします。

○「利己的な弁護士」との表題に、一瞬、私のことかと、ギョッとしました。私は、常に、「私は、世のため人のためになろうなんて大それた気持はこれっぽっちもない。」と広言してはばからないとんでもない人間だからです。当HPトップページの検索ウインドウに「世のため人のためになろうなんて」と入力して検索をかけると、「世のため人のためになろうなんて大それた気持はこれっぽっちもない。」を含むコンテンツが9個も出てきます(^^;)。

○ついでに私がいつも広言している「人生所詮自己満足」と言うキーワードで当HP内検索をかけてみましたが、不思議にもこの言葉を含むコンテンツは一つもありませんでした。教養深い大山先生と違って教養のない私は、リチャード・ドーキンス博士の「利己的な遺伝子」なんて著作を全く知らず、例によってネットで検索し、簡単解説ページがないか調べてみると、「つれづれに…」と言うブログの「利己的な遺伝子 」との表題記事が、判りやすく、簡明にまとまっていました。

○このブログでは、「親鳥は身を呈して雛を守るし、群れをなす鳥たちもタカを見つけたら自分ひとりで逃げないで仲間に知らせるじゃない! これのどこが利己的なんだ?」との疑問に対し、ドーキンス博士は、「生物個体からみると親鳥は自分自身を犠牲にして雛を守ることが『利他的』に見えますが、遺伝子全体から見ると、その行為によって親鳥が犠牲になったとしても、雛を通じて親鳥の遺伝子が生き延びる確率が上がれば、それは利己的な行為となる。雛には親鳥の遺伝子が50%の確率で存在するので、遺伝子にとっては、自分が乗っている個体(つまり生物の身体)を犠牲にしても、自分自身の遺伝子の繁栄を優先する。」と説明しているそうで、この説明で、あらゆる生物というのは、遺伝子のための「乗り物」にすぎないとの考えの一端が判りました。

○私の言う「人生所詮自己満足」とは、一見「世のため人のために尽くす」と大見得を切っている政治家、社会運動家、篤志家と謂えども、「世のために尽くした人」と「人間・社会から評価」されるためではないか、どれほど他人のために尽くしても、それは、他人のために尽くした立派な人と言う「評価」を得るためで、詰まるところ、「評価」されたという「自己満足」を求めているに過ぎないのでは、と言うものです。

○一見、ドーキンス博士の「利他的に見えて実は利己的」と言う「利己的な遺伝子」に通じるところがあると自惚れていますが、私の方は、正に「独断と偏見」で、「正確性に欠ける身も蓋もない」論理で、正に「我田引水」です(^^;)。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

利己的な弁護士

今回は、リチャード・ドーキンス博士の、「利己的な遺伝子」です。言わずと知れた、遺伝子レベルでの進化論、20世紀進化論の金字塔ですね。

多くの動物で、自分を犠牲にして、仲間のために尽くす利他的な行動が見られます。例えば、ミツバチの世界では、多くのハチたちは、ただ蜜を集めてくるだけの存在です。自分たちには生殖能力がないので、子孫を残すこともできません。外敵が来れば、自分の針を使って戦います。しかし、ミツバチの場合、一度でも針で刺せば、刺したミツバチの方も死んでしまいますよね。つまり、自分の命を犠牲にして、仲間のために尽くしているということになります。

このような利他的な行為を説明するのに、ドーキンス大先生は、あらゆる生物というのは、遺伝子のための「乗り物」にすぎないのではと考えたわけです。働くだけのミツバチの中にある遺伝子は、他のミツバチの遺伝子と大きく重なっているわけです。遺伝子レベルで見たときには、ミツバチ(これも遺伝子の乗り物です)の利他的な行為も、乗り物に乗っている遺伝子にとっては、利己的な行為と考えられるわけです。ドーキンス博士は、遺伝子レベルで生物を考えることにより、「人はなぜ争うのか」とか、「男はなぜ浮気をするのか」といった問題まで解き明かしてくれました。

というわけで、今から40年近く前に書かれた「利己的な遺伝子」は、素晴らしい本なんですが、どうもドーキンス大先生は、弁護士のことがお好きでは無いみたいです。「利己的な遺伝子」の中で、弁護士について、かなり厳しいことを書いています。

例えば、夫婦が離婚するとしますね。その場合、お互いが弁護士のところに相談に行きます。そうしますと、一方の弁護士は、自分の依頼者にとって一番有利な解決方法を考えて、相手方にぶつけることになります。この提案を受けた相手方の弁護士は、これを当然拒否します。そして、自分たちにとって一番有利な解決案を、相手方に投げ返します。つまり、双方とも、絶対に受け入れられない解決案を、お互いに応酬し合うことになるというのです。

こんなことになるのなら、一人の弁護士に間に入ってもらって、仲裁してもらった方がよさそうに思えますね。しかしそれは、双方代理になるということで、ドーキンスの英国でも、日本でも禁止されているわけです。弁護士は、制度的にも自分の依頼者のために戦うことになっているわけですね。

こうなると、当事者の夫婦は、いつまでも離婚ができずに疲弊していきます。その一方、双方の弁護士だけは、紛争が長引くことでお金を儲け続けることができるというわけです。

ドーキンス博士によると、このような弁護士の行動は、生物学的には「チスイコウモリ」の行動に類似するんだそうです! 「チスイコウモリ」って、「血吸いコウモリ」のことですよね。ド、ドーキンス先生、それはあんまりです!!

私としても、弁護士としてドーキンス大先生に言いたいことはあります。その一方、依頼者のために利他的に頑張っているつもりでも、結果的には弁護士にとって利己的な結果を生み出しているのではないかという視点は、忘れてはいけないと思うのでした。

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◇ 弁護士より一言

遺伝子と言えば、少し前に遺伝子ダイエットというのを試してみました。遺伝子のタイプごとに、肥りやすい食べ物などがあるそうです。私の場合、肉や油には比較的強いけれども、炭水化物は肥りやすいということです。それは良いんですが、タイプごとに動物の名前が付いているんですね。私はフラミンゴタイプだそうです。うちの妻はタコタイプ、娘はタヌキタイプと言われて、落ち込んでました。ううう。

何を食べても太りにくい遺伝子タイプの人もいて、それはアダム・イブタイプというそうです。なんか、名前からしてカッコいいです。「そんな奴いるのかよ?」と思っていたら、事務所の弁護士の藤井がこれでした。
「いい気になるなよ!」と心の中で思ったのです。
以上:2,884文字

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