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妻の不貞相手の子を我が子として20年近く養育した例2

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平成24年 6月 6日(水):初稿
○「妻の不貞相手の子を我が子として20年近く養育した例1」を続けます。
A男は、昭和51年1月にB女と結婚し、昭和58年10月にCが生まれ、AはCを我が子と信じて養育してきましたが、おそらく夫婦仲は、結婚当初より、余りうまく行っていなかったようで、Cが22歳時の平成17年、BがAに対し離婚と慰謝料請求の訴えを東京家裁に提起し、AもBに離婚と慰謝料支払を求める反訴を提起し、この裁判の過程でCはAの子でないことが判明し、東京家裁は離婚とBのAに対する金400万円の支払を認め、Aが控訴した東京高裁ではBのAに対する支払を金600万円に増額し平成18年6月確定して、AとBは離婚し、更にAはCとの親子関係不存在確認も東京家裁で認められました。

○Aは、おそらくBから600万円を回収し、更にCとの親子関係不存在も認められましたが、C22歳まで我が子と信じて、20歳になるまで養育してきたものが、22歳になって我が子でないと確認させられたことに憤懣やるかたない状況が続いたものと思われます。2年後の平成20年に至り、Aは再度Bに対し、慰謝料と不当利得返還請求の訴えを東京地方裁判所に提起しました。
その請求内容と、請求の理由についての、平成21年3月18日東京地裁判決は以下の通りです。
第1 請求
 被告は,原告に対し,3300万円,並びに,うち1500万円に対する平成17年6月25日から,及び,うち1800万円に対する昭和58年10月9日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は,平成18年6月1日に裁判上の離婚となった元夫である原告と,元妻である被告との間の紛争であり,原告が,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,いわゆる離婚原因慰謝料として1500万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成17年6月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,原・被告間の長男として出生届がなされたA(以下「A」という。)が,実際には原告の子ではなかったことなどを理由に,同人が出生して20歳になるまでの間,原告が同人の養育費相当額として被告に交付していた金員は,本来であれば原告が負担する必要のなかったものであるとして,不当利得返還請求権に基づき,20年間にわたって原告に交付した養育費相当額として1800万円の返還及びこれに対するAが出生した日の翌日である昭和58年10月9日から支払済みまで民法704条所定の法定利息の支払を求める事案である。
○Aは、平成18年に確定した離婚の訴えで、Bに対し慰謝料600万円支払を勝ち取っています。しかるに再度、慰謝料の請求は出来ないはずです。これに対し、Aは、前訴での慰謝料は、「離婚自体慰謝料(婚姻破綻=離婚に至ったこと自体に対する損害賠償)」であり、今度はそれとは異なる「離婚原因慰謝料」で別物であると主張して、1500万円の支払を求めました。

○確かに用語としては、配偶者の不貞、悪意の遺棄、暴力など、離婚の原因となった違法・不法行為そのものによってこうむった精神的苦痛に対する「離婚原因慰謝料」、離婚をせざるをえなくなったことによってこうむった精神的苦痛に対する「離婚自体慰謝料」と説明されていますが、現実には両者の区別を付けることは困難で、私自身はこのような区別は余り意味がないと思っています。しかしAは前訴で慰謝料を取っていますので、新たに訴えを提起するためにはこのようないわば「屁理屈」を付けて訴えざるを得ません。

○これに対しBは、前訴事件控訴審判決が認めた慰謝料は、CがAの子でないことやその他の離婚原因が競合して婚姻関係が破綻したことに対する慰謝料であり、離婚原因慰謝料として位置づけた上でその額を600万円としたのだから、Aが更に本訴で慰謝料請求することは認められないと反論しました。この点は、明らかにBの言い分に分があります。問題は、我が子でないCのための20年間分養育料1800万円の返還請求で、これに対する判断は、別コンテンツで説明します。

なお、慰謝料請求についての平成21年3月18日東京地裁判決の回答は以下の通りで、前訴と訴訟物が同一であることを理由に退けています。

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1 争点1(原告の本訴慰謝料請求の当否)について
(1)原告は,前訴事件控訴審判決は,離婚自体慰謝料の請求を認容したものであるのに対し,本訴慰謝料請求は,離婚原因慰謝料の支払を求めるものであるなどと主張して,上記判決において認容された慰謝料600万円とは別途,慰謝料1500万円の支払を求めている。

 しかしながら,前記前提事実4の上記判決の判示を検討すれば,前訴事件の控訴審裁判所は,原告と被告の婚姻関係の破綻した主たる原因が被告の度重なる不貞等であった旨認定した上,その被告の不法行為によって原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料,すなわち離婚原因慰謝料として600万円を認容したことが明らかであるから,原告の上記主張は採用しない。

 すなわち,原告の本訴慰謝料請求は,前訴事件における原告の被告に対する慰謝料請求と,訴訟物が同一であるというべきである。

(2)そうすると,原告の本訴慰謝料請求は,原告の被告に対する離婚原因慰謝料に係る損害賠償請求権が,前訴事件控訴審判決において認容された600万円とは別途,1500万円存在する旨を主張していることになるところ,前記前提事実4によると,上記判決は既に確定したというのであるから,その結果,上記損害賠償請求権が600万円を超えては存在しないとの点について既判力が生じているところ,原告の上記主張は,その既判力に抵触し,認める余地がないというべきである。

(3)したがって,その余の点を検討するまでもなく,原告の本訴慰謝料請求は理由がない。
以上:2,436文字

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