○情報公開の国アメリカでは、
LOCALcrimenewsと言うサイトで逮捕情報が公開されています。そのホームページのトップページをグーグル翻訳で日本語訳した表現は以下の通りです。
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カリフォルニア州の逮捕ニュースのリーディングソース
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○日本の感覚では、無罪の推定が働いているはずの逮捕の事実を公表するのは問題と思います。日本でこんなサイトが現れたら掲載された人から人権侵害等を理由に損害賠償請求が起こるのでと思うのですが、流石、アメリカは情報公開の国です。裁判での証人尋問がネットでライブ放送されているのを見たことがあります。
○日本では、被告が開発運用するインターネット上の情報検索サービスを利用して原告Aの氏名を条件として検索すると原告Aの逮捕歴に関する記載のあるサイトの表題及びURL(「検索結果」)が表示されることにつき、原告Aが、検索結果の表示によって名誉が侵害され、精神的苦痛を受けたなどとして、被告Google社に対し3000万円の慰謝料請求をした事案があります。
○これに対し、検索結果自体により原告Aが逮捕された事実が摘示されているとは認められず、検索結果により原告Aの名誉権が侵害されているとは認められないなどとして、原告らの請求を棄却した令和6年1月29日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。
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主 文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は、原告Aに対し、3000万円及びこれに対する令和4年10月5日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 被告は、原告会社に対し、6000万円及びこれに対する令和4年10月5日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
3 被告は、日本向けグーグル検索サービスにおいて、別紙検索結果目録に係る検索結果を削除せよ。
第2 事案の概要等
1 事案の概要
原告Aは、平成29年に会社法違反の被疑事実で逮捕勾留されたものの、のちに無罪判決が確定した。被告が開発運用するインターネット上の情報検索サービスを利用して原告Aの氏名を条件として検索すると、別紙検索結果目録記載の表題及びURL(以下、併せて「本件検索結果」という。)が表示されるところ、これは、原告Aの上記逮捕歴に関する記載のあるサイトのものである。
本件は、原告Aが、本件検索結果の表示によって名誉が侵害され、精神的苦痛を受けたなどと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、3000万円及びこれに対する訴状送達の日である令和4年10月5日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を、原告Aが代表取締役を務めていた原告会社が、被告に対し、本件検索結果の表示によって信用が毀損されたなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償として、6000万円及びこれに対する訴状送達の日である令和4年10月5日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めるとともに、原告Aが、被告に対し、人格権としての名誉権に基づき、本件検索結果の削除を求める事案である。
2 前提事実
(中略)
第3 当裁判所の判断
1 争点〔1〕について
(1)
ア 検索サービスによる検索結果の提供により社会的評価を低下させるか否かについては、新聞記事等の報道の場合(最高裁昭和29年(オ)第634号同31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照)と同様に、一般の読者(閲覧者)の普通の注意と読み方(閲覧の仕方)を基準として判断すべきである。
イ 前記前提事実のとおり、本件検索結果の表題には総会屋が逮捕された旨の記載があるものの、そこには原告Aの氏名等は表示されていない。そうすると、一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方を基準とすれば、本件検索結果が原告Aの氏名を条件として検索した結果であるからといって、これが原告Aが逮捕された事実を示すものと受け止めるとは認められない。
ウ 原告らは、本件元サイトに原告Aが逮捕された事実が記載されていることをもって,本件検索結果が原告Aが逮捕された事実を摘示するものであると主張する。
しかし、URLに元サイトのハイパーリンクが付されていることを考慮しても、元サイトに記載されている表現行為を行ったのは検索サービス事業者ではなく、検索結果の表示は、あくまでURL等の情報を提供する行為にとどまるから、検索サービス事業者の表現行為が直ちに元サイトの内容にまで及んでいるということはできない。そして、本件検索結果の表示には原告らを特定する記載が一切なく、まして、検索結果に表示された「総会屋」は、本件元サイトによれば原告Aとは別の人物であることが明らかであるから、本件元サイトに原告Aが逮捕された事実の記載があるからといって、それを根拠として原告Aが逮捕された事実が本件検索結果によって摘示されているとは解されない。
なお、原告が指摘する平成29年決定はプライバシーに基づき検索結果の削除請求をした事案に関するものであり、検索サービス事業者が検索結果を表示する行為が名誉毀損に該当するか否かが問題とされている本件とは異なる。
したがって、原告らの上記主張は採用することができない。
(2)以上からすれば、本件検索結果の表示によって原告らの社会的評価が低下したとはいえないから、被告が本件検索結果を表示し続けている行為が不法行為に当たるとは認められない。
したがって、争点〔2〕について判断するまでもなく、原告らの損害賠償請求は理由がないことに帰する。
2 争点〔3〕について
(1)原告Aは、人格権としての名誉権に基づく本件検索結果の削除の可否についても平成29年決定の判断枠組みが妥当し、本件では原告Aが逮捕された事実を公表されない法的利益が優越するから、削除請求が認められるべきであると主張する。
(2)しかし、本件の削除請求の対象は本件検索結果であるところ、これは検索サービス事業者である被告自身による表現行為との側面を有するものであり、検索サービス事業者による検索結果が削除を余儀なくされるということは、検索サービス事業者の表現行為に対する制約に当たるものといえる。また、検索サービス事業者による検索結果の提供は、現代社会における情報流通の基盤として重要な役割を果たしている。
したがって、名誉権に基づく検索結果の削除の可否については、原則として、検索結果自体について名誉毀損該当性、すなわち社会的評価の低下が認められるか否かを検討すべきであり、特段の事情のない限り、URL等の情報に基づく更に操作した結果としての元サイトの内容を考慮して削除請求の当否を判断すべきものとは解されない。なお、平成29年決定は、プライバシーに基づく検索結果の削除請求についてのものであって、名誉権侵害が問題とされている本件には適切でない。
そして、前記1で判示したとおり、本件検索結果自体により原告Aが逮捕された事実が摘示されているとは認められず、本件検索結果により原告Aの名誉権が侵害されているとは認められない。
したがって、本件検索結果の削除請求も理由がない。
第4 結論
以上によれば、原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第16部 裁判長裁判官 池原桃子 裁判官 池田幸司 裁判官 北澤陸
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